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福島第1原発汚染水対策 データ隠し 後手の対応・・「海洋放出ありき」を改めよ

政府・東電 度重なる不誠実

 東京電力福島第1原発事故で発生する放射能汚染水を処理した後に残る高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)について、政府は薄めて海に流す方針を10月中に決定することができませんでした。しかし早期決定の姿勢は変えていません。事故発生から9年半。データ隠しや後手の対応など、加害者である政府と東電による汚染水対策の無責任で不誠実な対応が浮き彫りになっています。(「原発」取材班)

 事故が発生した2011年3月、海水から高濃度の放射性物質が検出されるなど海洋汚染が深刻化しました。

 翌4月には、茨城県沖でとれた小魚コウナゴから食品の暫定基準を超える放射性物質を検出し、出荷停止に。

 同月2日、2号機取水口付近の穴から、放出基準濃度の1億倍を超える汚染水が海に流出していることが確認されました。2日後、東電は「高濃度汚染水の移送先を確保するため」として、貯蔵していた放射性廃液など(放出基準の最大1000倍)を意図的に海に放出。相談なく放出した東電に、漁業者は「暴挙」と抗議しました。5月には3号機取水口付近でも高濃度汚染水の海洋流出が見つかり、漁業者は東電などに抗議しました。

 その後も、処理途中の汚染水が排水溝を通じて海に流出するなど事故が散発しました。

“モグラたたき”

 13年には、汚染水対策の欠陥による事故が“モグラたたき”のように続出しました。

 4月、原発構内の地下貯水槽から大量の高濃度汚染水が土壌に漏れ出ていることが次々と発覚。急きょ実施した地上タンクへの移送中や移送先でも漏えい事故が発生しました。

 5月末、海の近くで地下水が汚染されていることが判明。早くから専門家が、海水のデータをもとに事故初期から汚染水の海への流出が継続していたことを指摘していました。しかし東電は汚染地下水の海への流出を認めませんでした。

 新たなデータで流出の疑いは濃厚になり、東電が海への流出を初めて認めたのは7月下旬。公表を参院選後に遅らせ、当時の安倍政権への“忖度(そんたく)”ではないかと疑念を呼びました。流出量は1日当たり300トン規模と見積もられました。

 8月19日には、タンクから高濃度汚染水300トンが漏れ出す重大事故が発覚。一部が排水溝を通じて海へ流出した可能性が高まりました。多数のタンクで高い放射線量が検出され、ずさんな管理も明らかに。試験操業延期に追い込まれた漁業者から「これまでの努力が無になった」と抗議の声があがりました。

 9月3日、国の原子力災害対策本部が「東京電力任せにするのではなく、国が前面に出て、必要な対策を実行していく」と決定。ところが7日には、安倍首相が五輪招致のための演説で、汚染水の状況は「コントロールされている」と“安全宣言”を世界に発信し、不信を広げました。

苦渋の決断2度

 14年、原子炉建屋への地下水流入による汚染水増加を抑制するため、上流側の地下水をくみ上げて海に放出する「地下水バイパス」の運用を開始。漁業者は「苦渋の決断」として受け入れました。

 一方、東電は、汚染地下水の海への流出を防ぐ目的の「海側遮水壁」の建設を進めていました。ところが完成目前になって、遮水壁を閉合するには、汚染地下水をくみ上げて浄化処理した後、海に放出する運用(サブドレン計画)が水位管理のために必要だと唐突に発表。東電も「後出しジャンケン」と認める不誠実な説明は漁業者から強い反発を招き、計画は頓挫(とんざ)しました。

 さらに15年2月、政府と東電への信頼が失われる事態が起こります。放出基準を大きく上回る汚染水が降雨時などに排水路を通じて外洋に流れ出ていることが発覚。東電は早くに把握しながら、データを公表せず対策も取ってきませんでした。

 国民に怒りと不信が広がるなか、漁業者は同年8月、海側遮水壁を早期に完成させるため、再び苦渋の決断をし、サブドレン計画を受け入れました。このとき漁業者は、アルプス処理水をタンクで厳重保管し、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わないよう求め、東電も「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、敷地内のタンクに貯留いたします」と約束したのです。

覆る議論の前提

 地下水バイパスのほか、建屋周囲の土壌を凍らせて壁を作る「凍土遮水壁」などの対策の効果は限定的で、汚染水発生は続いています。政府は13年にアルプス処理水の処分方法の検討を開始。トリチウムの生物や環境への影響のほか、技術・コスト面や社会的課題などを専門家会合で議論してきました。

 ところが18年、その議論を前提から覆す衝撃的な事実が判明します。アルプス処理水の8割にトリチウム以外の放射性物質が基準を超えて残存していると分かったのです。この事実を東電は報道されるまで説明せず事実上隠ぺいしてきました。

 漁業者や地元をはじめ多くの国民からは、海洋放出に懸念し、タンク増設による保管継続などを求める声があがっていますが、政府は、敷地の確保が難しいなどとして真剣に検討していません。

 政府・東電の「海洋放出ありき」の姿勢がさらに不信を呼んでいます。これまでの態度を根本から改めて国民の声に真剣に向き合うことなしに、汚染水の処分方法を決定する資格はありません。

(「しんぶん赤旗」2020年11月17日より転載)