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宮城 女川再稼働 知事の「同意」・・安全も住民も置き去り/女川再稼働 民意くむ努力ないまま

県民世論 反映されず

 東北電力女川原発2号機の再稼働をめぐり、宮城県の村井嘉浩知事が「地元同意」を表明しましたが、形だけの「地元同意」で県民の思いは反映されていません。

 再稼働の是非について住民が直接関与する機会はなく、村井知事が最終判断をして政府に回答しようとしています。

 県内35首長の“意見を聞く”として今月9日に開催された市町村長会議についてさえ、村井知事は事前の記者会見で「一人でも反対したら(地元同意が)できないというものではない」と話すなど、同意ありきという姿勢を通してきました。

 市町村長会議では、さまざまな意見を15首長が発言しました。しかし知事は11日、すでに賛成を示していた女川町長と石巻市長だけとの3者会談で「地元同意」を決定。賛成意見のみをくみ上げて突き進みました。

 知事は県民が再稼働に同意をしているかのように進めていますが、実態は異なります。

 地元紙・河北新報の世論調査(10月27日付)では、再稼働を認めた県議会の態度を「支持しない」が72%。知事が「地元同意」すべきかは、「いいえ」が「はい」の倍近くの57%に上りました。

 再稼働に反対する53の市民団体はこれまで請願署名を7回、累計15万7634人分提出しています。

 「脱原発をめざす県議の会」や「みやぎ女性議員有志の会」など、超党派で再稼働に反対する動きも広がっています。今年9月に仙台市で開かれた再稼働反対の県民集会では、約800人がデモ行進しました。

 2018年の再稼働の是非を問う住民投票条例制定の署名は、11万人余が集まりました。

 知事の「地元同意」は、さまざまな形で示された「再稼働反対」の県民世論に背を向けたものです。(高橋拓丸)

政府の無責任な推進

 東北電力女川原発は東日本大震災の当時、外部電源5系統のうち4系統が失われ、取水路から建屋の地下に海水が浸水するなどあわや重大事故という事態でした。建屋には多数のひび割れが生じ、建物の堅さである剛性の低下も確認されています。

 また、女川原発はこれまでの大きな地震の揺れに繰り返し見舞われており、地震や津波のリスクが高い場所です。国の地震調査研究推進本部によるとマグニチュード7クラスの地震の今後30年以内の発生確率は90%程度とされています。

 女川原発は、事故を起こした東京電力福島第1原発と同型の沸騰水型炉(BWR)。同事故後に再稼働した原発は9基ですが、いずれも西日本の加圧水型炉(PWR)で、東日本やBWRはいまだ再稼働に至っていません。

 BWRは、放射性物質の環境への放出を防ぐ格納容器の容量が小さく、格納容器の破損を防ぐためフィルター付きのベント(排気)装置の設置を必要としています。ベントでは、フィルターで放射性セシウムなどをこしとりますが、全てを取り除くことができない上に、希ガスなど全くフィルターの効果がない放射性物質もあります。放射能を閉じ込める対策を放棄しています。

 女川原発は、牡鹿(おしか)半島の中ほどに位置し、主要な道路は海岸に沿って曲がりくねった山道です。女川原発の半径30キロ圏内には7市町に約20万人が居住。5キロ圏内と半島部や離島部合わせると約3500人です。宮城県の試算では、30キロ圏内の人が一斉に避難し信号の調整などをしなかった場合、5キロ圏内の人たちが目的地に着くのに5日以上かかります。

 事故が起きたら、住民の安全は守れないとの不安の声を置き去りにすることは許されません。

 今回、政府は原子力規制委員会が規制基準に適合すると認めるとすぐ、再稼働に同意するよう地元に要請しています。無責任な原発推進政策の転換こそ必要です。

女川再稼働 民意くむ努力ないまま・・共産党宮城県委が抗議声明

知事の再稼働「県民同意」に抗議する党県委員会と党県議団の記者会見=11日、宮城県石巻市

 日本共産党宮城県委員会と党県議団は11日、石巻市で記者会見し、東北電力女川原発2号機の再稼働「地元同意」を表明した村井嘉浩知事に対し、抗議する声明を発表しました。立地自治体の石巻市と女川町の町議が同席しました。

 声明は、どんな世論調査でも県民の過半数が女川原発再稼働に反対していると指摘。住民投票も県民の意向調査も行わず、民意をくみ取る努力をしないまま押し切った「地元同意」に断固抗議するとしています。

 また、原発30キロ圏内の自治体に策定が義務づけられている避難計画が、実効性に重大な欠陥を抱えたままであると強調。再生可能エネルギーの導入に計画的に取り組み、「原発ゼロ」の日本を実現するよう求めています。

 記者会見で三浦一敏党県議団長は、再稼働への同意権(拒否権)が原発立地自治体にしか与えられておらず、再稼働に反対する周辺自治体の意向が無視されていると批判。「再稼働まで安全対策にあと2年を要します。原発ゼロの政治を求める共同を発展させ、政権交代による再稼働中止と、原発ゼロの実現をめざし全力を挙げます」と決意を訴えました。

(「しんぶん赤旗」2020年11月12日より転載)