のぼる 東京電力福島第1原発事故で出た汚染水を薄めて海に流す方針を、政府が決めようとしているね。タンクの汚染水って、どんなもの?
ふゆみ 原発事故で発生する高濃度の放射能汚染水は「アルプス」という装置で処理される。セシウムなど62種類の放射性物質の濃度を国の放出基準未満に低減できるとされるけれど、アルプスでも取り除けない放射性物質「トリチウム」が放出基準をはるかに超える高い濃度で残っている。
薄めればいい?
のぼる それで「アルプス処理水」とか「トリチウム汚染水」と呼ばれているのか…。それを海に流して大丈夫なの?
ふゆみ 政府・東電は基準より薄めて放出すれば科学的に大丈夫だと説明するけれど、国民の不安が払しょくされているとは言えない状況よね。その背景には、汚染水対策が後手に回ったことやデータ隠しなど、政府・東電への不信感がある。
のぼる 浄化処理するとはいえ、元はと言えば原発事故で発生して、いろんな放射性物質でひどく汚染されたものだ。漁業者や地元住民が風評被害を心配するのは当然だよ。実際、福島産の農水産物は検査で基準をクリアしていても、事故前より価格が低いなど、今も被害は続いている。
ふゆみ 人の心は単純じゃないからね。政府の会合で専門家がこんなことを言っていた。「例えば不動産で新しい部屋を決めるときに、殺人事件があったら、科学的に大丈夫でもそこに住みたくないのと同じだ」って。
のぼる 確かに。事故の加害者である政府・東電の態度が問われているね。「タンクが満杯になる」「科学的に大丈夫」などと、海洋放出を強行すれば禍根を残す。他にも選択肢はあるんでしょ?
ほかの選択肢も
ふゆみ モルタル固化とか、大型タンク設置や敷地外へのタンク増設で保管を継続するなど提案もされている。それなのに政府は難癖をつけて、真剣に検討しようとはしない。“技術的に簡単で安上がり”な海洋放出ありきの姿勢が見え見えよ。
のぼる 安倍晋三前首相も菅義偉首相も、汚染水は「コントロールされている」と言い続けてきた。事故の現実に向き合おうとしない不誠実な態度が、汚染水問題の解決を難しくしているね。
(「しんぶん赤旗」2020年10月24日より転載)