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「原子力災害伝承館」を訪ねて・・「教訓」生かす改善必要

伝承館を訪れた伊東達也さん

安全神話、国・東電の責任…

 福島県の「東日本大震災・原子力災害伝承館」が9月20日、開館しました。伝承館は、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の教訓を伝える目的で福島県が双葉町に建設しました。原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員でいわき市民訴訟原告団長の伊東達也さんと訪れました。(菅野尚夫)

 伝承館には、福島県の各地で収集された24万点の資料から160点余りが展示されています。収集費などを含む計53億円の事業費は国が実質全て負担。管理・運営するのは、国の職員も出向する公益財団法人「福島イノベーション・コースト構想推進機構」です。

 展示は「災害の始まり」「原発事故直後の対応」「長期化する原子力災害の影響」など、時系列に沿って六つのエリアに分けてあります。

 地震が起きた時刻で止まった時計、津波で基礎のコンクリートごと流されたポスト、ひしゃげた道路標識などが展示されています。津波災害の大きさを伝えるものはあるものの、避難所や炊き出し、全国からの支援や救援活動などを紹介するエリアはありません。

 また東電の津波対策の不備、放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI=スピーディ)の予測結果の公表遅れなども説明されていません。

 展示を見た伊東さんは「伝承すべき重要な事実について、意図的とも思えるほど記述が少ない。欠落していることが多い」と話します。

 伊東さんが指摘するのは、▽安全神話がどのように作られたのか、記述が少ない▽被害の実相と県民の無念さや怒りの声の紹介も少ない▽国と東電の責任に関する説明がない▽原発立地に際しての住民の分断や反対運動のあったことも説明がない▽東電のメルトダウン隠しも言及されていない―などです。

 その上で、「原発事故の何を伝承し何を教訓にするのかが問われている」として、改善や提案をしていく必要があると述べています。

(「しんぶん赤旗」2020年10月6日より転載)