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経済アングル・・「ゾンビ産業」原発

 日立製作所が、英国での原発建設を断念しました。2019年1月に「経済的合理性の観点」から凍結を宣言してから英政府などに支援を要請していましたが、ようやく断念したものです。

 この事業は、英国の原発置き換えを請け負ったドイツの電力会社が、福島第1原発の事故を受けて撤退し、英政府が売りに出したものを2012年10月に日立製作所が落札。その額は市場予測の倍以上だったとされます。買収を推進した日立製作所の中西宏明社長(現会長)は、のちに経団連会長となります。

 しかし、福島第1原発事故後、安全対策の費用は増え、原発は事業として成り立たなくなっていました。東芝が2006年に買収した米・原発企業のウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニーは、多額の損失で17年に破産。フランスの国策原発企業も多額の赤字を出し続け、企業再編を繰り返しました。

 日本の原発は、40年の運転期間を60年に延長。老朽化した原発を動かそうとしていますが、危険な原発への再稼働反対世論で、ほぼ稼働できていません。ほとんど発電できないので、利益も出ていません。

 「構造改革」を打ち出す菅政権になり、「ゾンビ企業」という言葉を頻繁に目にします。生きる死体のゾンビになぞらえ、経営破綻しているのに政府などの支援で存続している企業のことだそうです。利益が出ない原発はまさに「ゾンビ産業」。まともな資本家は「経済合理性」のない原発は見放すでしょう。

 原発産業は政府の後ろ盾がなければ、存在できません。かつて脱原発を主張していた河野太郎行革相には、速やかに原発部門の行政改革をお願いしたいものです。(吉川方人)

(「しんぶん赤旗」2020年10月6日より転載)