政府・大手電力会社が、原発・石炭火力発電を温存し、再生可能エネルギー普及にブレーキをかける施策をすすめています。8月28日には、環境団体が連名で消費者庁に、CO2削減に逆行する電力市場=「容量市場」の見直しを求める提言をするよう要請しました。
(徳永慎二)
消費者庁に要請したのはeシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)など15団体。新たにつくられる容量市場によって「古い原発や石炭火力発電が温存され、大手電力と再エネ新電力の格差はますます拡大する」という懸念を表明しています。
この市場は「将来の供給力確保」を名目に設置され、「(実際に売電しなくても)発電できる能力」を取引します。減価償却を終えた古い発電所であっても新しい発電所と同様に、落札金額が収入として得られるしくみです。お金は、新電力会社を含むすべての小売電気事業者から拠出金として徴収します。
現在、電源は余っています。にもかかわらず、一方的に「将来の電源不足」を前提にしてつくり出したのが容量市場です。eシフトが6月に発行したリーフレットは「電源不足の解消が目的なら、持続可能な形で再エネを増やすことが必要です。その上で、電力融通や省エネなど適切な対策をとれば電源不足は起こらず、容量市場は不要です」とのべています。
8月28日の要請で、容量市場の見直しを求める理由として挙げているのは三つ。(1)古い原発・石炭火力発電所が温存され、エネルギーシフト(転換)を妨げる(2)消費者にとって二重払いとなる(3)寡占化によって消費者の再エネ選択・電力自由化も危機となる―です。
なぜ「二重払い」になるのか。それは古い発電所の建設費は消費者の電気料金からすでに回収済みなのに、さらに固定費分に相当する容量市場収入が流れるからです。
容量市場のオークション結果は8月末に公表予定でしたが、「9月下旬に延期」と発表されています。
電源構成の開示は原則
「再エネの表示」のあり方も問題となっています。
eシフトが主催した8月20日の「再エネ電力の表示・販売方法」と題するオンラインセミナー。話題提供した新電力「みんな電力」の三宅成也さんは「電力会社の『再エネメニュー』には、電源と、CO2を出さないなどの環境価値を組み合わせた、さまざまなものがある」といいます。
たとえば、電源として石炭火力による低価格の電気を仕入れて、それに環境価値の一つ「非化石証書」をプラスすれば「実質再エネメニュー」とすることも可能です。一方で、「再エネ由来のFIT電気+FITの非化石証書」でも「実質再エネ」です。「再エネ」と表示できるのは事実上、大規模水力発電に限られています。
このことから三宅さんは「電源構成開示は原則であり、その上で消費者にとって分かりやすい表示ルールに変更することが求められる」と提起しました。
政府の「電力の小売営業に関する指針」は、大型発電所を保有する大手電力会社に有利な内容。セミナーでは「豊富にあるFIT電源を『再エネ』として活用できるようにすべきだ」との三宅さんの提起について意見を交わしました。
こうした再エネ新電力などの意見を受け、小売営業指針の再エネ表示ルール見直しの検討が始まっています。
また、自治体の再エネ調達にあたって「再エネといっても森林破壊や環境破壊を伴うものは、再エネとしての価値は低い。もっぱら価格面だけで評価する方式でなく、環境面での貢献など総合的に評価して調達してほしい」など自治体への注文が出されました。
(「しんぶん赤旗」2020年9月11日より転載)