関西電力大飯原発と高浜原発の住民避難計画に、両原発の同時事故を想定した対応や新型コロナウイルスなどの感染症拡大防止策が追加された。福井、京都、滋賀3府県と内閣府などが7月30日に東京都内で開いた地域原子力防災協議会で改定した。2原発の同時事故の想定は初めてで、対応拠点の一元化などが盛り込まれた。(野田勉)
大飯、高浜両原発の距離は直線で約14キロ。避難計画の策定が義務付けられている半径30キロ圏は重なるエリアが多く、18年8月には両原発の同時事故を想定した国の原子力総合防災訓練が行われた。だが、避難計画の中には同時事故の想定が盛り込まれておらず、検討が先送りになっていた。
改定では、両原発で同時事故が起きた場合、原則として大飯原発の対応拠点オフサイトセンターに一元化して統合現地本部を設置。設置のタイミングは、原子力規制委員長と内閣府政策統括官(原子力防災担当)が事態の進展を見極めて判断するとした。高浜原発5キロ圏内の在宅要支援者639人の避難先は、大飯原発30キロ圏内の美浜町から圏外の敦賀市に変更した。
新型コロナを踏まえた感染症拡大防止策も追加された。6月に改定された女川原発(宮城県)と同じ内容で、感染者とは移動用バスや避難先を極力分けることやマスク着用、手洗いなどの対策を盛り込んだ。屋内退避時は放射性物質の流入を防ぐことを優先し、換気は原則行わないとした。
このほか、広域避難先の調整に当たる関西広域連合と円滑に情報共有できるようにテレビ会議システムを整備。豪雪時の避難経路の確保を目的に福井、京都、滋賀3府県の連絡態勢を強化する。
関西電力大飯、高浜両原発の住民避難計画が改定され、新型コロナウイルスなどの感染症拡大防止策が明文化された。改定内容を審議した30日の地域原子力防災協議会では、福井県や地元自治体から国に対し、感染症対策のガイドライン策定や、対策に必要な資機材の支援を求める意見が出された。
協議会の審議は非公開で行われた。終了後、報道陣の取材に応じた内閣府の荒木真一政策統括官(原子力防災担当)によると、福井県は、移動用バス内での具体的な感染症対策やスクリーニング方法などを示したガイドライン策定を要望した。高浜町は広域避難に関する住民への理解活動を行うべきだと発言した。
計画では、両原発の同時事故の際、5キロ圏内の在宅要支援者5903人をバス113台と福祉車両54台で避難させる想定。荒木氏は「バスの数は確保できていると思うが、実際にこの地域で何台必要かといったことを個々の訓練で詰めていかなければならない」と述べた。
福井県は8月27日に大飯、高浜両原発の同時事故を想定して行う原子力防災訓練で、感染症対策を踏まえた住民避難や避難所運営などを検証する方針。
(野田勉、新屋安弘)
(福井新聞2020年7月31日付けより転載)