東京電力福島第1原発事故で発生した放射能汚染水を処理した後に残る高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水を薄めて海に流す案などを政府が検討している問題で、意見書や決議を可決した福島県内の議会が、少なくとも県と20市町村の計21議会にのぼることが、日本共産党県議団の調査で分かりました。海洋放出に反対する意見が圧倒的で、風評被害への対策、住民や関係者からの丁寧な意見聴取などを求める声があがっています。
意見書は、全県59市町村のうち、いわき市や南相馬市など太平洋に面した浜通り地方だけでなく、内陸部の会津若松市や郡山市など県内全域で次々と可決されています。
同原発から最も近い請戸(うけど)漁港がある浪江町は「風評被害に最も敏感な場所に位置している。漁業の全面再開を目前にしたこの時期に、安易に海洋放出をすれば、漁業関係者の被害は甚大」としました。
海洋放出に賛成はなく、18議会が悪影響に直接言及するなど否定的で、うち13議会は明確に反対。海洋放出への是非を避けた3議会も漁業者への風評被害に懸念を示しました。三春町と西郷村(にしごうむら)は大気への放出にも反対しました。陸上での長期保管を求める声も多く、トリチウムの分離・回収技術の開発を望む声もありました。
政府は、農林水産業や小売業などの団体から意見を聴く会合を開いていますが、一般市民の意見を聴くことに消極的です。「被災県民の意見を聴く公聴会を開催し、政策に反映させる」よう求める意見が複数ありました。
(「しんぶん赤旗」2020年7月8日より転載)