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感染症流行下の原子力災害避難・・「具体性なく無責任」

昨年、佐賀県で行われた原子力防災訓練に参加する住民=2019年2月2日、佐賀県唐津市

 新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、内閣府は今月、感染症の流行下での原子力災害時における防護措置の基本的考え方をまとめました。しかし、専門家からは「具体性がなく無責任」などの声があがっています。

 感染症の流行下に原発などで事故が発生した場合、住民は放射線による被ばくと感染症の拡大の双方のリスクにさらされることになります。先月18日には、福井県や関西地方の住民が、新型コロナウイルス感染症が広がるなか原発事故が起きた場合、感染拡大を招き安全な避難ができないとして、いずれも福井県にある関西電力の3原発7基の運転差し止めを求める仮処分を大阪地裁に申し立てています。

 内閣府の示した「基本的な考え方」は、避難や一時移転を行う場合、マスクの着用や手洗いなどのほか、避難所、避難車両で「感染者とそれ以外の者との分離」「人と人との距離の確保」を実施するよう求めています。

換気しない

 プルーム(放射能雲)をやり過ごすための屋内退避については「原則換気を行わない」としています。また、自然災害のため自宅ではなく指定避難所で屋内退避する場合、「密集を避け、極力分散して退避すること」としており、これが困難な場合は、あらかじめ準備している原発から30キロ以遠の避難先へ避難するなどとしています。

 内閣府は、各道府県に対して「各地域の実情を踏まえつつ、当面の対応および避難計画などの見直しにおける参考」にするよう求めています。

内閣府の計画無理多い

上岡直見代表

 環境経済研究所の上岡直見代表の話 前提として感染症の流行時には自治体の職員も手いっぱいの状態ですから、対応は不可能でしょう。

 避難所は、1人当たり2平方メートルで雑魚寝前提です。地域の公民館などを床面積で割り振っているだけなので、物理的に距離を取って避難することがまず無理でしょう。

 避難車両についても、現在でもバスが足りていないのに、感染者がいた場合さらに台数が必要となります。

 避難所への屋内退避も密集を避け、極力分散とありますが、分散してしまうと、自治体職員が管理できなくなります。緊急物資を配るなどもできなくなります。

 原子力災害の避難計画は、基本的に非常に無理が多いのです。そこに感染症や、感染症に限らず、複合災害があれば、対応不可能です。

 新型コロナウイルス感染症の流行下の原発事故の避難計画についての不安が出ていた中で、建前上答えた形ですが、具体性がなく無責任な内容です。

(「しんぶん赤旗」2020年6月11日より転載)