原子力規制委員会は原子力施設の許可の際、法令に基づいて経済産業相などへの意見聴取を行うとされています。日本原燃の六ケ所再処理工場についての意見聴取では、経産相に対し「『エネルギー基本計画』との整合性を含め」意見を求めるとする異例の文言が付け加えられていました。
これについて規制委の更田豊志委員長は「施設を運転することの正当化」を尋ねるものと説明。会見では「そもそも正当化されない施設は当然のことながら許容されない」と発言しています。
背景にあるのが再処理で取り出されるプルトニウムの問題です。
日本は長年、使用済み核燃料をすべて再処理し、取り出したプルトニウムを核燃料に利用する核燃料サイクル政策を掲げてきました。
「必要最小限」と
一方、プルトニウムは原爆の材料にもなり、日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を示してきました。2018年7月には、内閣府の原子力委員会が「プルトニウム保有量を減少させる」と明記したプルトニウム利用の基本指針を決定。新たな指針は、「プルトニウム保有量を必要最小限」と明記し、これに従うならば、当分は六ケ所での再処理は不可能となるはずです。
核燃料サイクル政策をとってきたため、日本は、海外に再処理を委託したものなどを含め、原爆6000個分に近い約46トンの分離プルトニウムを国内外に所有しているからです。
プルトニウム利用の要だった高速増殖炉の開発では、原型炉「もんじゅ」の廃炉が16年に決定。政府は、後継となる高速炉の運転開始を今世紀半ばとする行程表を示していますが、実現の見通しはまったくありません。
このため、政府は一般の原発(軽水炉)でプルトニウムを利用するプルサーマルでプルトニウム消費を進めようとしています。
六ケ所再処理工場をフル稼働させた場合、年間約8トンのプルトニウムが分離されます。電気事業連合会は、これを消費するために16~18基の原発でプルサーマルを目指しています。しかし、現在プルサーマルを実施している原発は4基で、プルトニウムの年間消費量は約2トン。現状の年間消費量ではプルトニウムがゼロになるのは20年ほどかかる計算です。
将来へ負の遺産
プルサーマルは安全性の問題もあり、地元の同意も必要なことから今後、大幅に増える見込みはありません。また、プルサーマルを実施すると使用済みウラン燃料よりも放射能が高い使用済みMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料が発生します。これをどうするのか、日本政府は具体的な方針を持っていません。
六ケ所再処理工場の建設費は当初計画の4倍の約2兆9500億円に膨れあがりました。さらに事業を続ければ、全体で14兆円近い事業費が見込まれ、経済的にもプルサーマルを進める意義はありません。
再処理工場で作られる高レベル放射性廃棄物の最終処分の見通しもなく、原発の運転は将来へ負の遺産を増やすだけです。核燃料サイクル路線の破たんを認め、撤回すべきです。(おわり)
(「しんぶん赤旗」2020年6月10日より転載)