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漂流する六ケ所再処理工場(上)・・原発より未熟な技術

 原子力規制委員会が、日本原燃の六ケ所再処理工場(青森県)に対して、新規制基準に“合格”しているとする審査書案を了承し、意見公募(12日まで)を実施しています。再処理について現在、その必要性が問われています。どんな問題があるのでしょうか。(松沼環)

 再処理工場は、原発の使用済み核燃料から、燃え残ったウランと新たに生まれたプルトニウムを取り出す施設です。高レベルの放射性物質が、強い酸性の硝酸や燃えやすい油性の溶媒とともに液体の形で工場内を流れており、「放射能化学工場」とも呼ばれます。原発以上に未熟で危険な技術と指摘されています。

海外で事故多発

 再処理の工程は、まず使用済み核燃料棒をジルコニウム合金の被覆管ごと数センチの長さに切断。硝酸を使って燃料部分を溶かして被覆管と分離。溶媒で硝酸溶液からウランとプルトニウムを抽出し、それら二つを分離します。それぞれの純度を高め、硝酸を蒸発させ、最終的にウラン酸化物とウラン・プルトニウム混合酸化物をつくります。

 しかし、海外の再処理工場では、繰り返し事故が起きています。

 英国のウインズケール(現セラフィールド)の再処理工場では1973年、放射性ルテニウムを含む不溶解の核分裂生成物が容器の底にたまり、崩壊熱で高温になったところに有機溶媒が流れ込んで発火。運転員らが被ばくしました。

 1993年にはロシアの軍事用再処理施設トムスク7でウラン溶液を貯蔵したタンクに、硝酸を加えた後に爆発。工場周辺にプルトニウムを含む放射能が放出されました。

 再処理工場には有機溶媒や放射線分解で発生する水素などいたるところに可燃物が存在し、化学反応や崩壊熱による高温などの条件があるため火災・爆発事故が多発するのです。

 ほかにウランやプルトニウムが連鎖的に核分裂する臨界や、冷却機能が停止し崩壊熱により溶液が沸騰・蒸発し溶解していた物質が固化し、一部の放射性物質が揮発する危険性があります。硝酸による配管などの腐食もあり、しばしば放射性溶液の漏えい・流出が発生しています。

再処理の工程(概略図)

桁違い汚染物質

 さらに再処理工場は操業するだけで、普通の原発と比べても桁違いに多い放射性物質を環境に放出することになります。使用済み核燃料の中には、原発の運転中に発生したさまざまな種類の放射性物質(死の灰)が閉じ込められています。切断の際には気体の放射性物質が放出されます。原燃の管理目標値によれば、気体は1年間でクリプトン85が16京ベクレル、ヨウ素129が110億ベクレルになります。

 また、液体の廃棄物もさまざまな工程から発生。これらの一部も海洋放出管から海に放出されます。原燃の管理目標値では、液体の廃棄物はトリチウム(3重水素)が年間9700兆ベクレル、同ヨウ素129が430億ベクレルにも及びます。6基の原子炉を有していた東京電力福島第1原発が事故前に基準としていたトリチウムの放出量は年22兆ベクレル。その約440倍にもなります。(つづく)

(「しんぶん赤旗」2020年6月8日より転載)