きょうの潮流

 青森県の下北半島の付け根に位置する六ケ所村で、日本原燃の使用済み核燃料の再処理工場が建設中です。27年前に着工されたものの、トラブルなどが相次ぎ、完成時期の変更は24回にも及んでいます。いまは21年度上半期をめざすと▼原子力規制委員会がこの施設について、新規制基準に適合したという審査書案を了承しました。この再処理工場を「核燃料サイクル」の中核と位置づけているのが政府です▼全国の原発の使用済み核燃料を運び込んで、プルトニウムやウランを取り出す“放射能化学工場”です。取り出したプルトニウムとウランは混合酸化物(MOX)燃料として再利用しようというのです▼そのサイクル自体がすでに破たんしています。これを大量に利用することを想定していた高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉が決まっているのです。工場が稼働すれば、使い道のないプルトニウムが増えるだけです▼一般原発でMOX燃料を使うやり方も、電力会社は「16~18基」とする計画ですが、現在稼働するのは4基のみ。日本はすでに原爆6千発分に近い約46トンのプルトニウムを保有しており、国際社会から懸念を広げかねない事態です▼国内外の再処理工場では放射能の放出や漏えい事故、火災爆発事故、核分裂反応が連鎖的に起きる臨界事故などが繰り返し起き、原発以上に危険ともいわれています。どこからみても核燃料サイクル政策は成り立ちません。規制委のお墨付きは、稼働する理由を失った現実を無視したものでしかありません。

(「しんぶん赤旗」2020年5月21日より転載)