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還流・原発マネー 関電第三者委報告から・・増設めぐる闇 未解明

 関西電力は、幹部らが森山栄治・元福井県高浜町助役(故人)からの金品受領問題を社内で調べた2018年9月の報告書を、問題が報道されるまで1年以上公表していませんでした。3月14日の関電本社での会見で、岩根茂樹前社長(同日辞任)はこう釈明しました。

 「報告書を公表すると(当時は存命だった)森山氏と対峙(たいじ)することになり、森山氏から過去のいろんな情報が出ることで原子力事業に悪影響が出ることを心配した」

 原発立地地域の長年にわたる有力者として、関電幹部から「関電の弱みを握る人物」と認識されたという森山氏。第三者委員会の報告書は、その森山氏と関電の「異常な」関係性を明らかにしています。

 「約束を忘れるな、なんなら明日報告をしろ」「振り回したろか」

 高浜原発所長が原子力事業本部長らあてのメールに記した、森山氏による「どう喝」の言葉です。報告書は、同氏に「関電の役職員に対して長時間にわたり大声で罵倒・叱責を続ける…などの行動がみられた」と記します。

関係の「発端」

 関電側も尋常でない対応を続けます。▽毎年、原子力事業本部の手配で森山氏の誕生日会や花見が開催され、関電の役職員や原発の幹部が出席した▽森山氏が、自身が高く評価する関電役職員について厚遇を働きかけ、実際に関電が同氏に配慮して社内慣例よりも高い役職に任命することがあった―。

 森山氏と関電のゆがんだ関係の「発端」と第三者委が位置付けたのが、1980年代に高浜町であった「フナクイムシ問題」でした。

 高浜原発の温排水で水温が上がり、付近の貯木場でフナクイムシの食害が発生した件です。経営が悪化した企業は関電に土地の買い取りを求めましたが、交渉は難航しました。

 そこで当時助役だった森山氏が間に入り、最終的に関電が相場の約2倍の額で土地を買い取りました。

 「どうして買い取り価格を上げられたのか、経緯が極めて不透明だ」

 但木敬一委員長はこう指摘しました。

 「社内のガバナンス(管理)が利かない森山氏に交渉を任せ、不透明な処理をさせる。関電が彼を活躍させたことで、彼が(関電に対する)『大恩人』になり、大きな力を持たせてしまった」

 これと似た構図が、70年代の高浜原発3号機・4号機の増設にいたる経緯にもみられるといいます。森山氏は、地元住民や漁民に対する「根回し・説得」に「最も尽力」しました。

 増設の過程で関電は高浜町への協力金として9億円を支払ったといいますが、これが当時の町長の個人名義口座に振り込まれたことは、後に住民監査請求の対象となりました。

 森山氏が関電側を、「発電所立地当時の書類は、今でも自宅に残っており、これを世間に明らかにしたら、大変なことになる」とどう喝したことが、関電の社内調査報告書に記されています。

 第三者委の報告からは、地元対策を森山氏に頼りながら原発を推進してきた関電の姿が浮かびます。この立場を背景に、森山氏は関電の役職者に多額の金品を贈り続けました。

暴露を恐れる

 関電が森山氏との関係を断ち切らなかった原因について第三者委報告書は「(1)不都合であり公表されたくない高浜原発立地時代の話を暴露されるのではないか(2)役職員が金品を受領してきたことで関電が批判にさらされるのではないか―などに根差した不安感・恐怖感」を挙げています。

 高浜原発をめぐる「暴露されたくない話」とは何か。会見で問われた岩根前社長は言葉を濁しました。

 「われわれ自身も分からない。過去の事実などが伝聞となり、『原子力事業に影響が出る』と思い込んでしまっていた」

 高浜原発増設の経緯に何があったのか。今も未解明です。

(「しんぶん赤旗」2020年4月5日より転載)