関西電力幹部ら75人が福井県高浜町の森山栄治・元助役(故人)から計約3億6千万円相当の金品を受け取っていた問題。第三者委員会(委員長・但木敬一元検事総長)が3月に出した報告を受け、関電は新たに退職者を含む82人の処分を発表しました。報告から、関電が原発立地地域の有力者とカネを介して相互依存しながら原発事業を進めてきた経緯を検証します。(随時掲載)
森山氏「明後日会う時に、いい話(工事)を持って来い。びっくりするような」
高浜原発所長「再三にわたり吉田開発に工事を持って来いとの要求。4000万円の工事を約束したが、それでは物足りない?…更に6000万円程度(事業本部に予算を交渉中)の工事を出す予定」
第三者委が電子メールのデータ復元などから明らかにした、森山氏と関電側とのやりとりを示す記録です。
ノルマが存在
吉田開発は、森山氏と関係が深いとされる高浜町の建設会社。報告書は、森山氏が同社を含む複数の自らの関連企業に、工事の発注などの便宜供与を繰り返し求め、関電もそれに応じていたことを詳細に記述しました。
個別事業での優遇だけではなく、企業ごとに年間発注予定額のノルマが存在したことも判明しました。
森山氏が相談役を務め、原発の定期点検などを請け負う兵庫県内の企業と、関電との「計画折衝経緯」という文書にはノルマとみられる数字が並びます。
「(平成)16年度34・5で手打ち」「(平成23年度)37・0案を提示。37・5で妥結」
これについて報告書は、関電が「森山氏らとの間で年度ごとの発注予定額を協議し、合意金額を発注予定額としていた」と指摘。この会社への発注予定額は2004年度から11年度で各年「34・5億円」~「37・5億円」でした。実際に、ほぼそれに見合う額の33億円~42億円の事業発注があったとしています。
こうした発注は現場判断ではなく、関電の原発を統括管理する原子力事業本部(福井県美浜町)と情報を共有しながら行われていました。冒頭のメールも、豊松秀己本部長(当時・後の副社長)らに送信されました。
ある議事録には森山氏が、県内の別の建設会社を工事の下請けから元請けに変えるよう強く求めた場面が出てきます。その中では、豊松氏が社内で「元請で出せる工事がないかチェックしておくこと」と指示したとされています。
豊松氏は、森山氏から受け取った金品が幹部の中でも計1億1000万円相当と飛びぬけて多く、森山氏と並んで今回の事態のキーパーソンの一人とみられています。
直接発注増額
カネの流れは、関電が原発再稼働を目指す中で強まりました。新たな規制基準に合格するため、原発の工事が増加。この時期に吉田開発への直接発注額は数千万単位(~14年)から1億~2億円(15~17年)に、森山氏が取締役だった警備会社への直接発注額は22億円(12年)から38億円(17年)に増えました。
報告書は「これらと時期を同じくして、(森山氏から)金品を受領した役職員の数や額も大きく増加していった」としています。
では、森山氏の金品の原資は何だったか。
報告書は、森山氏が関連会社などから顧問報酬や謝礼などの名目で総額数億円、年単位でも数千万円程度の金銭を受け取っていたと指摘。金品の原資の「少なくとも一部」が、こうした資金から出ていたとしています。
関電が発注する工事の原資は、消費者の電気料金。それが森山氏の関連会社に注がれ、さらに関電幹部らに金品として還流していたという構図です。
報告書は、金品提供の目的を「その見返りとして、関電に…自分の関係する企業へ工事等の発注を行わせ…それらの企業から経済的利益を得るという構造を維持すること」だったと結論付けました。
(「しんぶん赤旗」2020年4月1日より転載)