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リレーエッセー 福島の子どもたちは今(5)・・福島県民間教育研究団体協議会事務局長 遠藤慎一

未来守り発達を保障

 福島では、いまだ県民が県内だけでなく県外においてもさまざまな思いを持って暮らしています。

 東京電力福島第1原発事故の直後に、チェルノブイリ法(注)のような法律が速やかに制定されていれば、多くの県民が今よりずっと安心した生活を取り戻すことができていたはずです。放射能に汚染された他県の地域に住む人たちにとっても同様だと思うと至極残念です。そして、そうした法律ができるまで待っていられないのが放射能の危険性です。私たちは、「日本版チェルノブイリ法」策定を強く念じながら、非常事態下にいる子どもたちを守ることを最優先にして9年間を生きてきました。

 福島県にも民間教育研究団体協議会という組織があります。手弁当で行い、会費を出し合って学習会や年1回の定例研究集会などの活動を行っています。

 この間の中心的な研究テーマは、「放射能から園児を守りながら人間的発達を保障する保育園の運営をどう進めるか」「除染が不十分な環境の中、放射能の危険性について子どもたちにどう学ばせていくか」「中高生に対し『復興に寄与する人材育成を』という指針が出されているが、教育の本来あるべき姿はそれでいいのか」など。一貫して「子どもたちの生活や未来を危うくする」ものを注視し、子ども自身がそれらに気づき、学びを通して課題を克服できる方向性について認識を深めることができるようにとの姿勢をとってきました。

 チェルノブイリ法の学習も中学生や高校生なら十分に可能ですし、福島の本当の復興のためには、不可欠な学習の題材であろうと思っています。(おわり)

 注 チェルノブイリ法…1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原発事故を受けて、被災者の救援や汚染区域の管理などについて定めた法律。ソ連邦、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアがそれぞれの「チェルノブイリ法」を定めている。(『ウクライナの「チェルノブイリ法」』2017年12月16日JSAeマガジン編集委員会発行から)

(「しんぶん赤旗」2020年3月31日より転載)