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【福井新聞】原発の健全性脅かす・・「共犯」の30年_関電金品受領/(4)思考停止

 高浜町元助役の森山栄治氏(故人)から関西電力への圧力は、原発の安全な運営体制をも脅かしかねないほど執拗(しつよう)だった。

 第三者委員会の報告書によると、高浜発電所長だった長谷泰行氏は2010年、翌年1月に控えた高浜3号機のプルサーマルによる営業運転などに向け、保修業務に忙殺されていた。そんな状況でも、森山氏は柳田産業(兵庫県)に追加発注した1億円の工事実績をすぐに報告するよう、頻繁に要求した。

 「やるべきことが多々ある中、発電所の保安活動を阻害するもの」「発電所運営に支障」。長谷氏は11年1月7日、当時の原子力事業本部長の豊松秀己氏らにメールで愚痴をこぼしている。結局、長谷氏は貴重な保修人員を割き、森山氏への対応を優先した。「いつまでこんな対応をしているのか」。メールでは、森山氏と毎月京都で会い、2日に1回は電話で対応しなければならない状況にストレスを募らせていた。

 長谷所長、豊松事業本部長は、森山氏の存在が業務運営の支障になっているとの認識で一致していた。しかし、森山氏が機嫌を損ねれば、高浜原発の立地時代の不都合な話や関電幹部らの金品受領が暴露され、運営や再稼働に支障が生じるのではないかとする不安と恐怖が同居していた。

 結局、関電は森山氏との関係を断ち切る決断ができなかった。第三者委は報告書で「思考停止していたと言わざるを得ない」と組織の在り方を批判した。

 異常な関係にようやく幕が引かれたのは2018年、金沢国税局の調査が関電に入ってからだった。第三者委の久保井一匡(かずまさ)特別顧問は「外部からの指摘を受けて終了するのは恥ずかしい」と自浄能力を欠いた体質にあきれ、調査がなければ関係はさらに続いていたかもしれないと続けた。

 福井県内の市民団体メンバーらでつくる「関電の原発マネー不正還流を告発する会」発起人の1人、小浜市の住職中嶌哲演さん(78)は「森山氏と手を切らず、安全性より経済利権を優先してしまったことは許されない。経営陣、監査役の無能ぶりが暴露された。原発を運転する資格はない」と怒りをあらわにした。
(川上桂)

(福井新聞2020年3月22日付けより転載)