九州電力の川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県)が、3月16日に運転停止しました。テロ対策施設の設置が間に合わず規制基準「不適合」となるためです。年内には、川内原発2号、関西電力の高浜原発3号、4号(福井県)もテロ対策施設の設置期限の直前に運転停止する予定です。
国民の安全まで棚上げ
安倍晋三政権は、「世界で最も厳しい規制基準に適合すると認められた」(エネルギー基本計画)としながら、5年近くもテロ対策施設を棚上げしたまま運転させてきました。国民の安全をも棚上げするものと言わなければなりません。
テロ対策施設の設置期限は、当初は2017年7月でしたが、テロ対策施設以外の工事計画を原子力規制委員会が認可してから5年と変更しました。対応が間に合わないから延長してほしいという電力会社の要望があったからです。
規制基準は、東京電力福島第1原発事故の翌年に発足した原子力規制委員会が、事故の検証も不十分なまま、1年足らずで作ったものです。テロ対策施設を棚上げしただけでなく、直下でなければ活断層があっても原子炉を建ててよいことや、欧州で義務付けられている炉心溶融対策がないこと、アメリカでは避難計画なしに稼働できないのに、その制約がないことなど、当初から欠陥が指摘されていました。「世界で最も厳しい」基準どころか、大穴が開いた状態です。
電力会社のモラル崩壊を示す事件も相次いでいます。日本原電は、原子炉建屋の真下に活断層があると認定された敦賀2号(福井県)について、地質データを改ざんしていました。原発マネーをめぐる関西電力と高浜町元助役との癒着の根源には、原発立地に関わる「闇」があることが問題になっています。最低限のモラルさえ持たない電力会社に、重大な危険をはらむ原発を扱う資格はありません。
東北電力の女川原発2号(宮城県)、東京電力の柏崎刈羽原発6号、7号(新潟県)、運転期間40年超となる関西電力の美浜原発3号(福井県)、高浜原発1号、2号、日本原電の東海第2原発(茨城県)も規制基準に「適合」し、今後の再稼働が狙われています。
他方、再稼働に否定的な原発周辺自治体が生まれ、裁判所の運転停止仮処分決定なども出されました。新潟県では、政権与党が推す知事も「福島原発事故の検証なしには再稼働の議論はしない」と表明しています。
福島原発事故を機に、原発に対する国民の見方は大きく変わりました。日本世論調査会の調査では、規制基準で「安全性が向上したと思わない」56%、「深刻な事故が再び起きる可能性があると思う」84%、「原発ゼロをめざす」70%などとなっています。国民の多数は、重大な危険を抱える原発をなくすことを求めています。
エネルギー政策転換こそ
安倍政権は、「原発ゼロ」を求める国民世論を真摯(しんし)に受け止めるべきです。再稼働を断念し、原発ゼロを決断すること、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー政策に転換すること、これこそ、国民に対する政治の責任です。
野党共同で提出した「原発ゼロ基本法案」などを速やかに審議し、成立させる時です。そのために日本共産党はさらに力を尽くします。
(「しんぶん赤旗」2020年3月21日より転載)