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【福井新聞】偽の札束で贈答偽装・・「共犯」の30年_関電金品受領/(5)返金に苦慮

森山氏らから1000万円以上を受領した3人/金品受領後に返却・返礼した社員の事例

 「金品を贈るのをやめてほしい」「贈ってきても送り返す」。2015年4月、高浜町の建設会社「吉田開発」の役員に、関西電力の幹部がこう要請した。

 当時、原子力事業本部の副事業本部長だった鈴木聡氏だ。高浜町の元助役森山栄治氏(故人)や企業4社から、70回以上にわたり1億2千万円相当の金品を受け取った。今回、明らかになった金品受領者の中で最も多い額だった。第三者委の調査では、鈴木氏が返金に苦慮する姿が浮かび上がった。

 なぜ金品を贈ってくるのか―。鈴木氏が吉田開発の役員に理由を尋ねると、役員は「森山氏に言われ、仕方なく贈った」と回答してきた。鈴木氏は初めて、吉田開発が森山氏の指示でやむを得ず金品を準備していることを認識した。

 鈴木氏は吉田開発役員と相談し“奇策”に出る。トランプや裏紙を札束の厚さにまとめ、紙で包んだ偽の札束を役員が用意。森山氏の前で、本物の札束のように鈴木氏に渡したのだ。

 「ごちゃごちゃ言うな。おれの志が受け取れないなら、原発はやめだと高浜の連中に言うぞ」「わしの気持ちがなぜ受け取れないのか」。関電役員や社員が受領を拒むたび、森山氏は激高した。受領品を消費した者もいれば、品物を購入し森山氏に返礼した人も。ペルシャじゅうたん、ルイ・ヴィトンの財布…。返礼品は高級品ばかり。ティファニーの腕時計(40万円相当)を森山氏に受け取ってもらえず、自宅で保管し続けている者もいる。

 寄付した社員もいる。80万円分の商品券を受け取った社員は、森山氏が亡くなった後に日本赤十字社に同額分を寄付した。10万円分の商品券を受け取った舞鶴発電所の社員は、離任時に地元の寺の住職に渡したという。

 関電では1980年代以降、金品受領や供応を受けたことによる懲戒処分が6件あった。2016年には従業員延べ91人が協力会社から昼食や謝礼名目で数千円~5万円の現金や商品券を受け取り、出勤停止などの処分が下った。

 ただ、今回の金品受領問題では、なぜか岩根茂樹社長ら6人に対する報酬の一部返上や厳重注意などの処分にとどまった。

(嶋本祥之)

(福井新聞2020年3月23日付けより転載)