今年に入って四国電力伊方原発3号機(愛媛県)、関西電力高浜原発3号機(福井県)の使用済みMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料が原子炉から取り出されました。原発で本格的な発電後に取り出されたのは初めてです。使用済みMOX燃料は、原発の使用済み燃料プールに保管されることになりますが、その先の行き場はありません。(松沼環)
再稼働した原発で、MOX燃料を使うプルサーマルを実施しているのは、伊方原発3号機、九州電力玄海原発3号機(佐賀県)、高浜原発3、4号機の4基です。取り出された使用済みMOX燃料は当面、原発内の使用済み燃料プールで冷却されることになります。しかし、その後の行き先は、全くめどが立っていません。
再処理できない
政府の「原子力政策大綱」(2005年)で、使用済みMOX燃料を処理するための施設について「10年頃から検討を開始する」としていましたが、現在に至っても議論すらありません。プルサーマルの使用済みMOX燃料再処理に取り組んでいるのは、海外でもフランスだけです。
仮に使用済みMOX燃料からプルトニウムを取り出す再処理をしても、取り出したプルトニウムを利用する見通しはありません。
プルトニウムに詳しい元日本原子力研究開発機構研究員の岩井孝氏は「使用済みMOXを再処理して取り出したプルトニウムはプルサーマルでは事実上使えない」といいます。
燃焼を強く阻害
なぜか―。プルトニウムには、核分裂性のプルトニウム239以外に中性子の数の異なる同位体があり、「燃えやすさ」、つまり核分裂のしやすさが異なります。使用済みMOX燃料由来のプルトニウムは燃えにくいものが増加します。
また、核分裂性のプルトニウム241も増加しますが、約14年で半数がアメリシウム241に変化します。このアメリシウム241は、特にプルサーマルでは核燃料の燃焼を強く阻害します。つまり使用済みMOX燃料由来のプルトニウムは、短い期間で劣化していくことも問題となります。
岩井氏は「プルサーマルは資源の有効利用に、ほとんどなりません。さらに問題なのは高い放射能が続く超ウラン元素が増加すること」といいます。(つづく)
(「しんぶん赤旗」2020年3月14日より転載)