関西電力役員らの金品受領問題を調査した第三者委員会(委員長・但木(ただき)敬一元検事総長)は3月14日、大阪市内で記者会見し報告書を発表した。金品を渡していた高浜町の元助役森山栄治氏(故人)からの要求に応じ、関電が森山氏と関係が深い福井県内の企業などへ工事発注を増やしたなどとし、便宜供与を認定した。金品受領は森山氏が町助役を退任した直後の1987年6月に始まり、受領者は75人、総額は約3億6千万円相当だったと結論づけた。(嶋本祥之)
森山氏の死去などで確実な証拠がないとして刑事告発は見送る。第三者委は森山氏が金品を提供した狙いについて「見返りとして発注させ、その企業から報酬、手数料、謝礼など経済的利益を得る仕組みを維持すること」と判断した。関電役員らは代々金品を受け取り、共犯関係から抜けられなくなったと指摘。森山氏との会食は2009~17年度で421回、交際費は約8952万円に上った。
金品受領者は関電の61人と子会社2社の14人。新たに判明した55人への金品は現金や商品券、小判のほか若狭塗製品や大相撲チケット(10万円相当)などもあった。5人以上が100万円を超えていた。
報告書によると、森山氏は高浜原発3、4号機の増設で反対派を封じ込めるなどして関電への影響力を強めた。87年まで関電の最高実力者だった故芦原義重元社長らとの深い関係や、芦原氏らが原発運営で不適切な行為を行ったことをにおわせ、森山氏は「関電の弱みを握る人物」として恐れられるようになった。
調査結果を踏まえ、但木委員長は「関電は被害者ではない」と指摘した。立地政策については「今後透明性を持たないと維持できない」と訴えた。
森山氏が関電側に工事や業務を発注するよう要求していたとして実名公表した企業は、高浜町の建設会社「吉田開発」、兵庫県高砂市のメンテナンス会社「柳田産業」、高浜町の警備会社「オーイング」、敦賀市の建設会社「塩浜工業」。要求に応じて工事を発注したり、金額を約束したり、業務委託先を切り替えたりしたケースを確認した。
(福井新聞2020年3月15日より転載)
異常な関係30年、深刻 ガバナンス不全批判
「電気料金を払っているユーザー目線のコンプライアンス(法令順守)が全くない」。関西電力が長年にわたり、高浜町の元助役森山栄治氏(故人)とその関連企業に便宜供与を続けていたことが第三者委員会の最終報告書で明らかになった。但木(ただき)敬一委員長は14日の会見で、自浄能力の欠けた内向きの企業体質とガバナンス(企業統治)の機能不全を厳しく批判した。(川上桂)
報告書では、30年以上にわたる金品受領と、その見返りの工事発注などの関わりを「異常な関係でガバナンスの観点からも極めて深刻」とした。歴代幹部が森山氏との関係を断ち切ろうとしなかったことも「全く理解しがたい」と指弾した。
2004年の美浜原発3号機蒸気噴出事故を機に、原子力事業本部が美浜町に移転したことも問題の背景になったとした。但木委員長は「本店のコントロールが利かない独立王国となっていた」と指摘した。
金品受領問題の発覚は18年1月、森山氏の関連企業に対する税務調査がきっかけだった。18年9月に社内調査がまとまったが、当時の八木誠会長と岩根茂樹社長、森詳介相談役は公表の見送りを決めた。第三者委の久保井一匡(かずまさ)特別顧問は「関電は自浄能力がなかった。税務調査がなければ、まだ森山氏との関係が続いていたかも分からない」と問題の根深さを強調した。
(福井新聞2020年3月15日より転載)