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東日本大震災・福島原発事故9年 被災地から(4)・・漁業・水産加工業のいま 岩手県

浜で語る岩手漁民組合の藏組合長=8日、岩手県洋野町種市

魚とれず存続の危機

 岩手県の三陸沿岸は漁業・水産加工業が基幹産業です。大震災の津波で壊滅的被害を受けた漁港、冷蔵施設、水産加工場が再建されています。しかし、ここ数年、深刻なのは漁獲高の減少です。

 「震災から9年で建物や道路は見ばがよくなってきたども、魚が取れないのが一番の大問題です」

 同県宮古市の水産加工業、小が理商店の小笠原信子さん(70)はそう話します。「うちの主力商品はスルメイカ開きやサンマ寒風干し、新巻きサケ。不漁で、よそから買うと材料費が高くなり、経営は苦しいです」

国の援助求める

 同商店は1912年の創業以来、港近くで営業してきました。高台に逃げ、家族は無事でしたが店は全壊。「何とかここまでやってきたども魚がなければ続けられなくなる。震災の時は従業員と一緒に再建のためにがんばってきた。従業員は20人いて、それぞれ家族があり、魚がとれなくても暮らしを支えなければならない。国に法定福利厚生費の援助をしてもらえば助かる」と要望しました。

 三陸沖では北からの親潮と、南からの黒潮がぶつかるために多様な魚が取れます。日本共産党の落合久三宮古市議は「サケ、サンマ、スルメイカなど親潮に乗ってくる魚介類が激減し、黒潮に乗ってくるアジ、イワシ、サバなどは現状維持か、少し増えている。地球温暖化の影響があるのではないか。サケの稚魚を放流しても回帰率も低くなっている」といいます。

置き去りの漁船

 「これを見てけれ」。山田町田ノ浜の漁師、橋端(はしばた)辰徳さん(71)に案内された浜には置きざりにされた漁船が何隻も。「震災後に漁師をやめたり、船長が亡くなったりした人の船だで。漁師は500人ほどいだが、今は380人くらいだ」

 橋端さんは「高齢化と後継者不足に加え、魚が取れなくなってる。このままでは漁民は生活できなくなる。魚を増やす対策や後継者を育て、応援する施策を」と訴えます。

 「あの浮きは、コンブの養殖をしているんだ」。洋野町種市に住む岩手漁民組合の組合長の藏(くら)德平さん(84)は説明します。久慈市より北の海は遠浅で、魚よりもウニやアワビ漁が盛んだと語ります。ところがここ数年、海藻が激減。「ウニやアワビは、ものすごく海藻を食べる。昔は天然の太ったウニが取れたども、今は海藻が少ないので、養殖したコンブをウニの餌にしている」といいます。

 藏さんは漁業資源が減っている背景として「温暖化だけでなく、サケの定置網漁や大型船でのトロール漁法などで小さい魚も根こそぎ取っていること、親潮に乗ってくる魚が日本近海に南下する前に、外国船が北方で大量に取っていることが考えられる」と指摘。「復興のために国や県は漁業資源の保護・管理をしっかりやるとともに、零細な沿岸漁民が魚を取って生活できるようにしてほしい」と求めています。

 (武田祐一)

 (おわり)

(「しんぶん赤旗」2020年3月12日より転載)