陽光に映える真新しい駅舎。駅前はロータリーがつくられ、役場の連絡所も隣接しています。14日のJR常磐線全線再開通に向けて再建された双葉駅です▼福島第1原発から約4キロ。駅周りの道路や歩道は整備が進んでいますが、近くの店や住宅は時が止まっているかのよう。屋根や戸は崩れ、家の中も荒れたまま。ひと気のなさも変わっていません▼原発事故で唯一、全町避難がつづく双葉町。今月、帰還困難区域のごく一部が初めて解除されました。2年後の春には住民が戻れるようになるといいますが、町の調査ではふるさとへ帰ることを望んだ人たちは1割にとどまりました▼未曽有の被災から9年。福島の避難者はなお4万人以上にのぼり、戻ってくる人はごくわずか。すでに避難先で生活の基盤ができている住民も多い。双葉町からいわき市に避難したある家族は子どもが今年、高校受験。同市の小中に通い家も建て、もう戻るつもりはないと▼これだけ長く故郷を追われても事故の収束ははるか遠い。たまりつづける汚染水や汚染土の処理、廃炉作業は困難を極めます。それにもかかわらず原発再稼働に突き進む安倍政権や東電の理不尽さ。先日も大震災で被災した女川原発にゴーサインがでました▼こんなに深刻な事故を起こし、住民のくらしをめちゃくちゃにしながら少しの痛みも感じないのか。避難者訴訟原告団長の早川篤雄さんはあまりの無責任さに憤ります。そして、この国に希望をもたらすためにも、たたかいつづけると。
(「しんぶん赤旗」2020年3月12日より転載)