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東日本大震災・福島原発事故9年 被災地から(2)・・介護需要急増 福島県(下)

国の支援継続が必要

 東京電力福島第1原発事故後、周辺自治体で急増した介護需要。福島県葛尾(かつらお)村の馬場弘至副村長は「周辺自治体は同じ悩みを持っている」と語ります。介護保険サービスの給付費増大と、それに伴う介護保険料の高騰です。

7町村上位10位

 全国の自治体で介護保険料の高い上位10位に福島県の7町村が入ります。1町を除き、いずれも事故直後に全域避難を強いられた自治体です。事故当時、3300円だった葛尾村の保険料の基準月額は9800円で全国最高になっています。

 馬場副村長は、原発事故による長期避難の影響を強調します。高齢でも農作業に汗を流し、元気だった人が狭い仮設住宅に移り、体を動かす機会が減少した結果、健康状態が悪化。事故前年に100人だった村の要介護認定者数は一時162人(現在は150人)にまで増えました。

 3世代同居のような大家族の離散によって、家族で担っていた介護が困難となり、施設入所が増えたことなども介護給付の伸びにつながったといいます。

■介護保険料が高い自治体全国トップ10

住民の負担増に

 今は国の支援による減免措置があり、介護サービス利用者は一部を除いて負担を免除されていますが、支援がなくなれば村民に負担が重くのしかかることになります。

 村は、介護保険の現状を分析し、村民がいきいき健康に暮らせるよう新たに介護が必要になるのを予防していくための対策検討チームを設置。生活習慣の見直しや社会参加を村民に促すことで、介護給付を減らし、保険料値下げにもつながる多くの取り組みを進めています。

 昨年からは避難先と村内で地域住民がサロンに集い、体力づくりや脳活性化ゲームを楽しむ「いきいき交流会」などを始めました。

 馬場副村長は話します。「国の原子力政策によって、この状況に追い込まれており、村民が悪いわけじゃないんです。今のまま減免措置が打ち切られるのは困る。村民が健康で、できる限り要介護にならないよう努力を続けますが、国には悪化した状況を改善できるよう自治体等への力強い支援を求めたい」

 (この項、岡素晴)

 (つづく)

原発事故被害 今も続く

 福島民医連の鈴木隆夫事務局長の話 福島県は東日本大震災の被災地で唯一、直近まで関連死が続いています。長期避難に伴う被災者の健康悪化の影響が考えられます。原発事故の被害は今も継続し、拡大を続けていると思います。

 国が医療・介護保険の減免措置の「見直し」を打ち出したのは、原発被災者が帰還できなくても減免を無くしていこうとの狙いにほかなりません。

 大きな災害における医療・介護の負担免除は、日常生活動作(ADL)や介護度を悪化させない点で非常に有効だと思います。健康悪化が続く中で免除をなくせばどうなるか。避難を強いられた人たちが望んで暮らせる場所に落ち着くまで継続すべきです。

(「しんぶん赤旗」2020年3月10日より転載)