日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 消された「エネルギー基本計画」原案 原発ゼロ(下)・・国民の声を徹底排除

消された「エネルギー基本計画」原案 原発ゼロ(下)・・国民の声を徹底排除

トルコを訪問しエルドアン首相(右)と原発輸出について会談した安倍首相=10月29日(首相官邸ホームページから)
トルコを訪問しエルドアン首相(右)と原発輸出について会談した安倍首相=10月29日(首相官邸ホームページから)

「市民軽視がはなはだしい。COP19(気候変動枠組み条約第19回締約国会議)で発表した温室効果ガス排出量を1990年比で3・1%増加させる温暖化対策も、今度の『エネルギー基本計画』原案も、国民の声を全く聞こうとしない。秘密保護法と同じだ」

地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)の早川光俊専務理事は、国民の声を徹底的に排除する安倍晋三政権の体質を厳しく批判します。

民主党政権が昨年(2012年)9月に発表した「2030年代の原発ゼロ」方針が決められる過程では、市民の声が決定的な役割を果たしました。市民参加型の討論型世論調査や意見聴取会が開かれ、パブリックコメント(意見公募)には約9万人が意見を寄せました。意見公募のうち9割が「原発は不要」と主張し、原発に固執する民主党政権を追い詰め、「原発ゼロ」方針を掲げさせる原動力になりました。

いきなり提出

安倍政権に移行後は、討論型世論調査や意見聴取会は開かれていません。温暖化対策では原発が稼働しないことを低い目標の根拠にしています。今年(2013年)4月には、これまでNGO(非政府組織)などに割り当てていたCOPの政府代表団バッジを一方的に取り上げ、ポーランドで開かれたCOP19で石原伸晃環境相はNGOとの懇談に応じませんでした。

経済産業省の12月6日の基本計画原案提出も突然でした。基本計画について審議する経産省資源エネルギー調査会基本政策分科会の委員に、同省が原案提出を伝えたのは同日の昼近くでした。

6日の分科会ではもともと、米国シンクタンクの研究者による講演だけが日程として組まれていました。同日の分科会では、骨子と本文あわせ60ページを超える原案が突然出されたため、委員から「まだ前半しか読めていない」との声もだされました。安倍政権は年内に最終案を策定し、年明けにも閣議決定する構えです。

輸出のために

「世界で原発が拡大するのは事実。日本が降りて中国が(輸出の)イニシアチブをとっていいのか」

基本政策分科会では、原発推進の委員から、原発輸出のためにも原発維持が必要だとの発言が繰り返されました。基本計画原案も「福島原発事故後も、国際的な原子力利用は拡大を続ける」と指摘。「事故の教訓に基づき安全性を高めた原子力技術を提供し、世界の原子力安全に貢献するとともに、原子力新規導入国の人材育成・制度整備支援等を拡充」すると強調します。

日立がゼネラルエレクトリックと合弁企業をつくり、東芝がウエスチングハウスを傘下に収めるなど、現在、日米の原子炉メーカーは一体となって原発輸出に走っています。基本計画原案は、こうした日米原子力産業の融合をあげ「日米はパートナーとして、原子力を利用する体制を強化するための重要な役割を担っている」と主張します。

原発利益共同体の中核である原子力産業協会の今井敬会長は、今年4月の年次大会で「原子力技術の海外展開は、日本の成長戦略の一翼を担うものだ」と述べています。

福島原発事故を経験した国として、日本は原発のない世界をつくる先頭に立つことこそ求められています。基本計画原案には、国民の声に耳を傾けず、財界・米国と一体となって世界に原発を売り歩く、安倍政権の危険な体質が現れています。 (おわり)
(この連載は佐久間亮が担当しました)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です