2018年1月に、関西電力幹部らに金品を持参した元助役と関係がある建設会社の吉田開発(福井県高浜町)に金沢国税局の調査が入りました。この年の1月の審議会で関電の豊松秀己副社長(当時)は、早期の原発再稼働が「信頼回復のベース」と強調し、将来にわたって原発を活用するには「リプレース(建て替え)が必要だ」と、エネルギー基本計画に明記もされていないリプレースを求めています。
翌2月に「立地地域への支援」をテーマにした審議会では、工事会社の発注額が落ちていることに触れ、地域の支援策を議論してほしいと発言しました。
同年3月には、原発の停止で工事会社の売り上げが20~80%程度に落ち込んでおり、「何としても、このあたりで歯止めが必要であると思います」と再び言及。「再稼働とリプレースが必要」だと強調しています。豊松氏は18年3月20日の第17回まで専門委員を務めますが、この間も原発の再稼働とリプレースの必要を主張し続けました。
さらに豊松氏は委員会で、電力自由化後の原発の事業継続に心配がないように、▽原発事故に備えた損害賠償制度(原賠制度)について、電力会社の負担のあり方の見直し▽原発の廃炉会計のルールの見直しの優遇策▽原発の使用済み核燃料の再処理事業の延命策―などを求めていました。実際に、政府がこの主張に沿った見直しをしたものもあります。
豊松氏は受け取った1億1千万円余のうち、国税局の調査後に、7257万円を返却。スーツの仕立券20着分(1千万円相当)は未返却といいます。
政府の審議会で豊松氏の後任となったのは、同じ関電の森中郁雄常務執行役員・原子力事業本部長代理(後に副社長・原子力事業本部長、9日付で役職を辞任)。同氏は電気事業連合会原子力開発対策委員長でもありましたが、電事連によると同日、本人が辞任を申し出たといいます。森中氏も今回、高浜町の元助役から現金や商品券、スーツの仕立券など4060万円相当の金品を受け取り、スーツ仕立券16着分(800万円相当)が未返却です。
同じ審議会の委員を務めるNPO法人・原子力資料情報室の伴英幸共同代表は「金品を受け取っていた専門委員は辞任しないと済まないと思う。今回、明るみに出たのは関電ですが、他電力でも大なり小なり、そういう持ちつ持たれつの関係があるのではないか。この際、すべて明らかにする必要があります」と話します。(おわり)
(「しんぶん赤旗」2019年10月18日より転載)