2012年12月に発足した第2次安倍晋三内閣は、構造改革の司令塔である経済財政諮問会議を3年半ぶりに再起動させ、翌13年6月14日に「骨太の方針」を閣議決定しました。
世論踏みにじり
東電原発事故後の「原発ノー」の世論を踏みにじり「原子力発電所の再稼働を進める」と明記した上で、「立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」としました。政府を挙げて、原発再稼働へ向けて、立地自治体関係者などへの関与を強化する方針を決めたのです。経済財政諮問会議の議長は、安倍首相であり、この方針の責任者です。
関電に金品を提供していた森山氏は、高浜町で助役まで勤めた地元の有力者です。関電の経営幹部たちが、森山氏への金品の返納をあきらめたのは、森山氏との関係悪化を恐れたためです。その背景には、「自治体関係者」との理解・協力をうたった「骨太の方針」があったのです。安倍官邸が、関電と森山氏との癒着・腐敗構造を温存・増長させたと指摘せざるを得ません。
安倍内閣は、14年4月には、原子力を「重要なベースロード電源である」と位置付けた第4次エネルギー基本計画を策定しました。ここでは、「国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」として、国の役割を「前面に」打ち出し、いっそう踏み込みました。
その後、経済産業省は15年7月に「長期エネルギー需給見通し」を発表。原子力を「ベースロード電源」と位置付け、30年度の総発電電力量に占める原子力の割合を20~22%とするとしました。原子力事業者にとっては、再稼働は国の大方針です。関電が政府とともに、再稼働にまい進している背景がここにあります。
第4次エネルギー基本計画の策定の舞台は、経済産業省の総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会でした。分科会長は新日鉄住金(現・日本製鉄)の三村明夫名誉会長です。
一方、原発利益共同体の中核組織である原子力産業協会の会長は、日本製鉄出身の今井敬元経団連会長です。国策決定の場に食い入る原発利益共同体人脈の根深さを物語っています。
今年4月9日に開かれた年次大会で今井氏は、「2030年におけるエネルギーミックスの目標値である原子力発電比率20~22%を達成するためには、今後10年程度で原子力発電所を30基程度稼働させる必要があります」と再稼働推進を強調しています。
日米合作で推進
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会の8回会合(13年10月28日)には、日本の政財界に強い影響力を有している米国の保守系シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハレム所長が講演していました。
この中でハレム所長は、日本政府に対し「原発を再開するしか選択肢はないと思っています」「長期のエネルギー戦略の上で、原発は日本の戦略の一部を構成せざるを得ないと思います。これはベースロードを賄っていく上で最良のエネルギーであります」と強調していました。「最良のエネルギー」である原発の推進は、日米合作であることを示しています。
原発を所管する経済産業省は、同省から高浜町に職員を出向させています。08年から、今日まで途切れることなく続き、延べ人数は4人に上ります。11日の衆院予算委員会で日本共産党の藤野保史議員が明らかにしました。
関電にとって再稼働を進めるためには、住民の反対運動が地元の高浜で広がらないようにすることが至上命令でした。そのためには、森山氏との関係を温存しておく必要があったのです。
(おわり)
(「しんぶん赤旗」2019年10月18日より転載)