関西電力幹部らに福井県高浜町の森山栄治元助役から少なくとも3・2億円の金品が渡っていたことについて、他の電力会社元幹部らから「もらった金額が多すぎる。異常だ」など疑念の声が出ています。「原発マネー」はどこに流れたのか―今後の関電調査の焦点になっています。(「原発」取材班)
「原発の地元に寄付したり、地元業者に工事を回したりすることはよくある。しかし、電力会社の役員個人に戻ってくる金額としては異常だ」
福井県内の事情を知る電力会社の元幹部は関電側への「還流」についてそう驚きます。
この元幹部は原発立地地域で、地元工作をしていたことがあります。原発をつくる際には、政治家など地元有力者を使って根回しする、というのです。
原発完成後も、有力者の協力は欠かせないとも。再稼働のためなど追加工事や新増設工事をする際に、「賛成の意思を表明してもらう必要がある」といいます。
関電側に金品が流れた時期は、高浜原発(高浜町)再稼働のため安全対策工事をすすめた期間と重なります。当時、関電原子力事業本部で幹部をしていた2人には1億円を超える金品が渡っていました。関電は個人で受けとったものとして、会社としての関与を否定しています。
前出の元幹部はいいます。「地元へは、金を落とす一方だ。逆方向はない。下請け業者からウイスキーぐらいはもらったが、関電のように1人1億円を超えてもらうなんて異常な額だよね。裏金になりうる金額だ」
電気事業連合会の幹部として関電と付き合いがあった電力会社元トップは「(地元の有力者が)金をくれるというのは、理解不能だ。せびられることはままあるが…」と言います。
「原発を作るには20~30年はかかる。地権者らと密接にならなければできない」とも。それでも「(関電のように)『先方が金をくれるから困った』なんて話を部下から聞いたことがない」と振り返ります。
他方で「原発マネー」が役員個人ではなく、政治家側に「還流」していた例は過去に多くあります。
―佐賀県玄海町長(当時)が大株主だった建設会社が、九州電力玄海原発から多額の工事を受けていた。
―三村申吾青森県知事が社長だった建設会社が、原発の使用済み核燃料を再処理する六ケ所再処理工場(青森県)の工事を受注。
―福島県双葉町の町長(当時)が社長だった建設会社が、東京電力福島第1原発の工事をしていた。
関電は新たな調査委員会で、森山元助役から渡された事案がほかにもないかを中心に調べる方針。還流先をさらに追及するとはしていません。
還流した「原発マネー」が本当に関電役員個人にとどまっていたのか―関電まかせにせず徹底解明が必要です。
(「しんぶん赤旗」2019年10月8日より転載)