【ベルリン=伊藤寿庸】日本も協力してフランスが進めていた高速炉ASTRID(アストリッド)の開発計画が中止されました。8月31日付の仏紙ルモンドが伝えました。同計画には仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)が多額の資金をつぎ込んできましたが、ウラン価格の低下などで経済的に成り立たないと判断しました。
同紙は「ASTRIDは死んだ。これ以上の資金もエネルギーも費やさない」とするCEA関係者の言明を報道。CEA報道官はそれを確認したうえで、ASTRIDは「今世紀後半へ向けた長期的プロジェクト」だと述べました。
フランスは、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを燃料とする高速増殖炉スーパーフェニックスが故障続きで、1998年に廃炉を決定。しかしその後も歴代政権が、使用済み核燃料の処理問題の解決策として高速炉の開発を追求してきました。
ASTRIDは、冷却剤に金属ナトリウムを使用。ナトリウムは空気に触れると燃焼し、水に触れると爆発する性質を持ちます。ルモンド紙によると、ASTRIDは昨年11月、60万キロワットの実証炉から10~20万キロワットに規模を縮小。4月には計画を担当する25人の部署も解散されていたといいます。
日本は高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を2016年に決める一方で、破たんが明らかな「核燃料サイクル」を推進する後継炉として高速炉開発を決定。フランスなどとの国際協力をうたっていました。
(「しんぶん赤旗」2019年9月2日より転載)