経済性なし 延命許されず
現時点での既存原発の発電コストを試算してみました。「発電コスト検証ワーキンググループ」の計算方法にもとづき計算しました。
試算の方法は、▽建設費は当時のまま▽追加的安全対策費は原子力規制委員会に適合性審査を申請した原発における安全対策費用としました。複数の原子炉がある場合は基数で割り、平均をとる▽停止期間を考慮し、発電量を減らす▽“原発側に有利”になる方向で、2020年に再稼働すると仮定▽燃料費は福島原発事故前10年間の平均値―としました。
多くの原発で、「2014年モデルプラント」と比べて発電コストが高くなり、既存原発の発電コストの平均は、1キロワット時当たり13・2円となりました。適合性審査の申請を行った既存原発のうち(19年5月現在)、東電、関電、四国電、九電の発電コストをみると表のようになります。
「2014年モデルプラント」の「10・1円以上」を下回るものがありますが、1970年代初期で、建設費が極端に低かったなどが要因です。原発が始まって以来、発電コスト低減は全然達成できていません。
この7月、東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発の追加的安全対策費が従来試算の6800億円から1・7倍の約1兆1690億円になることが分かりました。その費用で計算してみると、6号機が16・2円、7号機が16・1円にもなりました。
電力各社は、当初は追加的安全対策費がこんなにかかるとは思わなかったのではないでしょうか。投資してしまった以上、もうやめられなくなって困っているのかもしれません。もはや原子力発電は高くなっているのですから、再稼働に向けて投資を続けるのは賢明ではありません。
放射性廃棄物の処分や廃炉に向けた取り組みも必要になってきます。原発の発電コストは今後、上昇することが予想されます。一方、再生可能エネルギーは急速に発電コストを低下させています。
国は“原子力は安い”といいながら、経団連などの求めに応じて補助が必要だとするなど論理矛盾をしています。これ以上、経済性がない原発の国による延命策は許されません。(おわり)
(「しんぶん赤旗」2019年8月22日より転載)