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本当の原発コストって?・・龍谷大学教授・原子力市民委員会座長 大島堅一さんに聞く(上)

膨らむ建設費の反映が必要

 経済産業省資源エネルギー庁が「世界では再エネコストが大きく低減」とした資料を今年3月に示しています。一方、政府が「エネルギー基本計画」(2018年7月)で「運転コストが低廉」としてきた原子力はどうか。原発のほんとうのコストって? 龍谷大学教授で、原子力市民委員会座長の大島堅一さんに聞きました。(中東久直)

原発の事故後に評価方法を公開

 東京電力福島第1原発事故前の2004年に、電気事業連合会が総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会コスト等検討小委員会に示した、原子力発電の1キロワット時当たりの発電コストは5・3円。このときは、発電コストの計算方法やデータの重要部分は非公開でした。

 福島原発事故後に設置された「コスト等検証委員会」以来、計算方法や根拠は広く公開されるようになり、原発事故費用や追加的安全対策費用、技術開発・立地自治体への交付金などの政策費用も原発の発電費用として捉えられるようにはなりました。これは自民党政権になっても引き継がれました。

 「エネルギー基本計画」で「運転コストが低廉」とする根拠は、総合資源エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通し小委員会発電コスト検証ワーキンググループが15年に出した報告書です。原子力発電の発電コストは、「2014年モデルプラント」で、1キロワット時当たり10・1円以上とされ、他の発電と比較すると低い水準になっています。

 「2014年モデルプラント」とは、14年時点で新規に建設する場合のコスト計算のモデル。40年間、一定の設備利用率で運転したとき、1キロワット時当たりどれくらいかかるのか、発電コストとして発表されました。「平準化発電コスト」といわれる指標です。

15年コスト検証 問題点はどこに

関西電力高浜1・2号機(福井県高浜町)

 15年のコスト検証には問題があります。建設費は福島原発事故前に建設された直近4基の原発の平均値。原発事故前のタイプの原発を建設し、追加的安全対策を講じるという想定です。しかし、福島原発事故後、溶融した炉心を受け止める「コアキャッチャー」など根本的な安全対策をするというのが、世界の流れになっています。欧米ではいま、建設費用が2、3倍になっているといわれています。

 新設の原発建設費用の増大、どんどん膨らんでいく追加的安全対策費が反映されていないのは問題です。遅くとも、18年の「エネルギー基本計画」策定時には原発発電コストの再計算をすべきでした。追加的安全対策費はいま、新聞報道と各電力会社の社長会見などをもとに積み上げていくと約4兆6000億円にものぼっています。

 また、15年のコスト検証では事故リスク対応費用の計算方法が変えられてしまいました。これまでは全事業者が40年間で積み立てる「共済方式」。損害費用を事業者の発電電力量で割るというシンプルな考えでした。ところがそれを原発事故発生頻度方式に読み変えて、新規制基準を導入したので事故発生確率は半分になるとし、事故リスク対応費用を半分近くに減らしてしまいました。

 (つづく)

(「しんぶん赤旗」2019年8月21日より転載)