東京電力福島第1原発事故で福島県から愛知、岐阜、静岡の各県に避難した42世帯128人が国と東電に計約14億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が8月2日、名古屋地裁でありました。桃崎剛裁判長は国の責任について、東電に対し津波防護措置を命令しなかったのは「著しく合理性を欠くとは認められない」と、国の責任を否定しました。
また東電に対し、109人について計約9684万円の支払いを命じ、19人の請求を棄却しました。原告側は控訴する方針です。
全国で約30ある同様の集団訴訟で12件目の一審判決。国が被告になった9件の裁判で、国の責任を否定したのは千葉地裁の二つの判決に続く3件目。
桃崎裁判長は、国は2006年時点で福島第1原発の原子炉建屋がある敷地の高さを超える津波の到来を予見できたと判断。しかし、原告側が主張するタービン建屋の二重扉設置などの津波防護措置は「事故までに完成しなかった可能性が高く」、事故を防げたと認められないとしました。
また、原告の多くを占める避難指示区域外からの避難者について、最大12年8月末まで合理性を認め、慰謝料額を1人当たり最大100万円が相当としました。
判決後、原告側弁護団長の細井土夫氏は「原発は国が進めてきた。造る以上は国の責任は当然である。責任がない判決自体、全く納得できない。賠償認容額も評価できない」と述べました。
原告団共同代表で福島県伊達市から愛知県に避難した岡本早苗さん(41)は「言葉にならない。国の責任が認められなかったのは納得できない。こんな判決のために6年たたかったわけではない」と訴えました。
福島県南相馬市から愛知県に避難した伊藤廣明さん(66)も「原発は国策。ならば事故が起きた責任を最後まで負わなければならないと思う」と述べました。
(「しんぶん赤旗」2019年8月3日より転載)