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火山灰想定 再審査を・・関電3原発 規制委が命令

新規制基準に「不適合」とされた関西電力の火山灰想定

 原子力規制委員会は6月19日、関西電力の美浜、大飯、高浜の3原発7基(いずれも福井県)でこれまでの想定を超える火山灰が降る可能性があり、現在の火山灰想定では新規制基準に「不適合」だとして、審査をやり直すため火山灰の評価を変更する申請を今年12月27日までに提出するよう関電に命じました。福島第1原発事故後に導入されたバックフィット(既存施設への基準適合要求)制度に基づく変更の命令は初めてです。

 現在、高浜原発3、4号機、大飯原発4号機が稼働中ですが、規制委は、噴火が差し迫った状況にはないとして停止を求めません。市民団体などは、これらの原発の停止を求める声明を発表。日本共産党の笠井亮、藤野保史の両衆院議員も国会で、停止を命じるべきだと主張しています。

 規制委は昨年、大山(鳥取県)の約8万年前の噴火で火山灰の厚さを大山から190キロの京都市内で25センチと評価。同噴火の規模が、審査時の評価より大きくなるとする新たな知見が得られたとして、関電に再評価を指示しました。

 3原発のこれまでの火山灰の想定は10センチでしたが、関電の解析では20センチ程度といずれもそれを上回りました。しかし、関電が新たな評価で申請することを拒否したことから、今回の命令となりました。

 関電は11日になって、期限内のできるだけ早い時期に申請すると表明しています。

 関電が申請すれば規制委は、審査で火山灰の厚さなどの評価の妥当性や対策の必要性などを確認することになります。対策の期限は、許可時に検討するとしています。

解説

運転許容の余地ない

 審査時の自然災害の想定が不適当であり、基準への「不適合」が認定されたことは、これまでにないことです。

 しかし規制委は、大山(鳥取県)の噴火が差し迫った状況でないことや、「継続的安全性向上を図るため」として、これらの原発の停止は求めないとしています。

 更田豊志委員長は、「事業者が自ら(新知見を)見つけてくれる例も今後あるだろう」として、停止を命じることで「自社の原子炉が停止となったら、だれも言ってこない」などと説明しています。

 しかし、今回の命令の発端は、規制委が産業技術総合研究所に委託して行った安全研究によって得られた新知見です。2017年6月には、関電に大山の約8万年前の噴火に関する情報収集を要請しました。その後、関電と議論や調査を実施し、昨年、現地調査の結果などを踏まえた同噴火の規模や原発での火山灰の厚さの評価を関電に命令。関電は、それまで安全研究で示された知見を評価に取り込むことをかたくなに否定し続けたのです。

 関電が評価した結果は3原発の火山灰の厚さが、いずれも許可時の想定を上回るものでした。ところが今度は、原発の運用期間中に同規模の噴火が大山でおこる「可能性は十分低い」とし、評価を変更する必要はないと主張。このために規制委が命令する事態となったのです。

 安全を値切ろうとする事業者に危険な原発を運転する資格はなく、規制委が基準不適合状態の原発の運転を許容する余地はないはずです。(松沼環)

(「しんぶん赤旗」2019年6月20日より転載)