「拒否で苦しむのは住民」
第44回全国公害被害者総行動に参加する東京電力福島第1原発事故被害者の9訴訟団、100人は6月5日、政府と東京電力に被害の回復と補償を求めて交渉しました。
裁判外紛争手続き(ADR)を申し立てている高橋敏明さん(65・福島県伊達市)は地域の農家の現状について、「放射能が出ないといいきれないコメを消費者に提供できない。出荷できているのは10軒に満たない。水路を直し息子が戻って専業になる予定だったがめども立たない」と訴えました。ADR弁護団の鈴木雅貴弁護士は東電に対し、「許しがたいのは東電がADRに和解手続きの打ち切りを求めたことだ。東電は『被災者の個別の事情に丁寧に対応する』というのに打ち切りを求めるのはどういうことか」と批判。参加者が口々に「そうだ」と声を上げました。
鈴木弁護士は「和解案拒否によって地域復興の意気がそがれている」とし、経済産業省に対して「安倍首相は『東電はADRの和解案を尊重すべき』と答弁した。東電にどう指導しているのか」と問いました。経産省の担当者は「和解が打ち切られた事案に対応している」と答えました。
鈴木弁護士は交渉後、「和解案受諾に向けて経産省が東電を指導していないことが分かった。首相答弁はリップサービスだったのか。拒否で苦しむのは住民だ」と批判しました。
「福島原発事故津島被害者訴訟」の今野秀則原告団長(71・同県浪江町津島)は「帰還困難区域となった津島の1400人は誰も帰っていない。田畑はヤナギ林になり、イノシシやタヌキが家を荒らし、住民は涙も出ない」と述べ、「9550ヘクタールの帰還困難区域のうち、1・6%しか除染計画がない。家に帰れず不安な状態のまま放置しないでほしい」と訴えました。
(「しんぶん赤旗」2019年6月6日より転載)