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福島に生きる いわき文学同人 そのべあきらさん(81)・・原発ゼロ「文学の力」で

  原発の差し止め訴訟の我らをばと国賊まで呼びし人あり

 いわき文学同人で歌人の、そのべ・あきらさん(81)=福島県いわき市在住=の詠んだ歌です。

■悔しさがにじむ

 40年前に東京電力福島原発建設に反対して設置許可処分取り消し訴訟を福島地裁に起こし、最高裁まで争い、1992年原告敗訴が確定しました。

 三・一一また巡りしに原発の敗訴文をば手にとってみる

 悔しさがにじむ短歌です。2011年3月、東日本大震災と福島第1原発事故に遭遇し、雪辱のたたかいに挑んでいます。東電と国に損害賠償と原状回復を求めた、いわき市民訴訟(伊東達也原告団長)の原告になりました。

 8年前、福島第1原発が炉心溶融(メルトダウン)。「言っていたようにこんなことになって」と、瞬間的に怒りが沸騰しました。

 福島大学を卒業後、福島県内の中学・高校に38年間勤務しました。短歌や小説を書き『いわき文学』に作品を発表し続けてきました。

 『時、流れても』で福島県文学賞奨励賞、『いのち』で同準賞受賞。「原発のテーマなくして今の作品は考えられない」と、「文学の力」で原発ゼロ、再稼働反対を訴えています。

 作品『もう聞かないでくれよ、忘れたいんだ』は、原発事故で浪江町請戸から避難している高校生・志のぶたちの物語です。「7割は事実。3割がフィクション」というストーリーは、凄惨(せいさん)ないじめの実態をリアルに表現しています。

 「本当は、浪江とか双葉とかの高校のはずよ。原発でいい思いをして今更、ここにきてさ、いい顔して…」。

 仮設住宅に暮らす避難者の生徒に対するいじめのシーンです。

 『いのち 3・11震災をのりこえて』は、東日本大震災の大津波の濁流に流され行方不明となった妻を捜し、弔うまでの話です。「『手を放すな』と叫んだとき、逆巻く渦に結んだ手から幸子がもぎとられた。ぐるぐると巻かれながらも誠一郎は、水中の真っ黒な闇を必死に探ったが幸子の存在はなかった」。結婚39年を迎える夫婦は永遠の別れとなります。

■憲法が人生示唆

 小説を書くようになったのは、20年前からで、短歌は11年前からです。

 戦争が終わった時、そのべさんは「国民学校2年生でした」。矢田川で水遊びをしていたとき艦載機の銃撃を2回うけました。戦争体験のある世代。戦争が終わり、灯火管制がなくなりました。戦後、黒塗りの教科書で学びました。

 『あたらしい憲法のはなし』は、「夢中で読みました。人生の示唆に一つでもなればと思って今も持っています」。1947年8月2日に当時の文部省が、5月3日に施行された日本国憲法の解説のために発行しました。

 「戦争体験と原発事故体験と最悪の負の出来事に遭遇した私たち。戦争反対、原発ゼロを大にして訴えていきます」(菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2019年5月27日より転載)