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2019参院選 希望を語ろう・・原発ゼロ・再エネへの大転換

 東京電力福島第1原発事故が起きて以降、「原発ゼロ」を求める声は国民の間に根強くあります。この願いにこたえ日本共産党は「原発ゼロの日本、再生可能エネルギーへの大転換をはかる」ことを提案しています。他方、安倍政権が進める原発再稼働推進・原発固執の政治はいよいよ現実的ではなくなっています。日本共産党はこの大転換こそ「未来があり、希望がある」と訴えています。

経済性抜群 風力・太陽光

世界の常識 経産省資料も認める

 原発メーカーの日立製作所が今年1月、英国での原発建設の凍結を決定しました。日立は「民間企業としての経済合理性の観点から判断した」と述べ、原発がビジネスとして成り立たないことが明らかになりました。三菱重工業もトルコへの原発輸出を断念する方向です。安倍政権が成長戦略の一つに掲げて進めてきた原発輸出はすべて計画倒れに終わったのです。

 安倍政権は、原発の発電コストについて、2015年に経済産業省の作業部会が試算した1キロワット時当たり「10・1円以上」を使って、他の電源より「安い」と宣伝しています。

 しかし、この「原発低コスト論」がすでに破たんに陥っています。

 今年3月、同省資源エネルギー庁が内閣府の会合に提出した「再生可能エネルギーの発電コスト」に関する資料には、「世界では再エネコストが大きく低減。太陽光発電・陸上風力発電ともに、10円/kWh(キロワット時)未満での事業実施が可能となっている」と明記。会合で再エネのコストは「さらに低減する見込み」と説明しています。15年の試算をもとに「原発は安い」としてきた主張を自ら否定しているのです。

 「10・1円以上」の試算自体は「甘い想定」と指摘されているものです。試算時に東京電力福島第1原発事故の対応費用を12・2兆円と想定しましたが、翌年に政府が21・5兆円に増えると発表。建設費も1基4400億円と想定していますが、英国で頓挫した日立の原発計画(2基)の事業費(約3兆円)にみられる高騰ぶりからみれば低すぎます。

 さらに重大事故の発生確率を低くし、高レベル廃棄物の処分費を低く見積もっています。その数字でさえ、「原発は安い」の主張を通せなくなっているのです。

 世界では太陽光など再生可能エネルギーの発電コストが急速に低下しており、原発がもはや安くないことは常識になっています。

 世界的な投資銀行ラザードの電源別の発電コスト分析によると、陸上風力や太陽光は石炭火力の半分以下で経済性に優れている一方、原子力は陸上風力や太陽光の4倍近くになっています。(図)

負担底なし 原発

「安全対策」・放射性廃棄物管理…

世界で上昇する原発の発電コスト

 原発のコストが高いことは東京電力福島第1原発事故で国民の前に示されました。賠償などの費用について、すでに国などによる出資や立て替え分は10兆円を超えています。これらは税金や電気料金などを通じて国民が負担しているものです。

 しかし、事故の収束には程遠く、溶け落ちた核燃料などの燃料デブリの取り扱いさえ見通しがありません。事故対応費用が最大81兆円になるという民間研究機関の試算もありますが、費用がどこまで膨らむか、まったく見通せません。計り知れない被害をもたらす重大事故を繰り返さない最大の保証は原発ゼロです。

 再稼働のための既存原発の「安全対策費」も電力会社11社で4・6兆円にもなっています。運転期間が40年を超え、より危険な老朽原発も耐震や防潮堤などの追加工事をして動かそうとしています。この費用も各原発で膨らみ続けています。しかし、原発ゼロを決断すれば必要のない費用です。

 原発を運転すればするほど、使用済み核燃料も増え続けます。政府は使用済み核燃料の再処理から発生する高レベル放射性廃棄物(「核のゴミ」)を地下300メートルよりも深い地層に埋めるとしていますが、10万年もの超長期間の管理が必要とされています。どれだけの費用がかかるか、算定は不可能です。将来世代への負担を野放図に強いる無責任な原発依存政策に、未来はありません。

 原発固執で利益を得るのは原発利益共同体に属するひと握りの巨大企業だけです。

 7月の参院選で「原発サヨナラ」の審判を示し、日本共産党など野党4党が国会に共同提出した、全原発の速やかな停止・廃炉を掲げた「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」(原発ゼロ基本法案)の実現が求められています。

変わる世界 再エネ倍増

地域経済潤し 雇用効果けた違い

原発に頼らず再生可能エネルギーの開発と普及の取り組みが広がっています

 すでに世界では再生可能エネルギー・脱炭素にかじを切っています。再エネは急速に普及し、発電設備容量は10年前と比べるとほぼ倍増しています。世界の発電電力量に占める比率は約4分の1を占める一方、原子力の比率は下がり続け、17年には10%まで低下しました(BP世界エネルギー統計)。

 再エネはその地域に根差したエネルギーで、その担い手の主役は中小企業などです。

 雇用効果は、原発をはるかに上回ります。福島原発事故前に原発が全国54基だったときでさえ、日本の原子力関係従業員数は約4万6000人(2010年度、日本原子力産業協会調べ)です。これに対し、ドイツで再エネに携わる従業員数は33万2000人(17年、国際再生可能エネルギー機関)とけた違いの多さです。

再エネ資源 豊富な日本

元日本環境学会会長・自然エネルギー市民の会代表 和田武さん

 提案にある大きな流れは大賛成です。

 重要なのは環境保全の視点です。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」は、21世紀半ばに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを求めています。人類の危機的状況を回避するカギはエネルギー利用のあり方です。

 CO2を排出せず、安全で資源が豊富な再生可能エネルギーの重要性は世界的に認識され、世界は再エネ中心社会の構築に向かっています。再エネ普及は経済発展、雇用創出、エネルギー自給率向上、化石燃料費用の負担軽減など多くの好影響をもたらします。

 以前の再エネ普及ではデンマークやドイツなどの先進国の取り組みが世界をリードしていましたが、最近は中国やインドをはじめ途上国でも急速に普及が進み、ケニアでは電力の87%を再エネで賄っています。「再エネ100%」の目標を掲げる国や自治体、企業も増加しています。

 提案にもあるように、再エネは地域に根差した資源ですので、普及の担い手には市民、地域が適しています。デンマークでは風力発電の8割が地域住民の所有、ドイツでも再エネ発電の約半分が市民所有です。市民や地域による再エネ利用は地域に利益や雇用をもたらし、地域の自立的発展につながります。そうした例をドイツ等各国で数多くみています。

 日本には原発に頼らずとも、太陽や風力、水力、森林、地熱など豊富な再エネ資源があります。市民と地域による再エネ普及で明るい未来を目指せます。

(「しんぶん赤旗」2019年5月22日より転載)