東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生からきょうで8年です。未曽有の大規模広域災害による犠牲と被害は甚大で、岩手、宮城、福島の3県を中心に5万人超が避難生活を続けるなど深刻な課題は山積したままです。避難の長期化、復興の立ち遅れの中で、被災直後と異なる新たな苦難に直面している人が数多くいます。被災者一人ひとりの切実な声にこたえた、きめ細かな支えが求められます。国は支援の手を緩めることなく、責任を果たすべきです。
きめ細かな対策を手厚く
住まいを失った被災者が入居する災害公営住宅(復興住宅)は、3県で計画された約3万戸がようやく完成予定ですが、入居者への支援が重要となっています。
プレハブ仮設で顔なじみだった人と別の住宅となって周囲との関係が薄れ、単身の高齢者などは孤立しがちです。災害公営住宅で誰にも気づかれずに亡くなる「孤独死」は増加しています。災害を生き抜いた人の命が、このような形で失われることはあってはなりません。ところが見守りや心のケアをはじめ、入居者を支える公的な支援員が常駐する住宅は一部です。入居者の状況を日常的に把握し支援できる人員配置など手厚い仕組みを整えることが急がれます。
仮設住宅の被災者支援は引き続き大切です。経済的事情などで住まいが確保できず、4月以降プレハブ仮設住宅には約600世帯1300人、民間住宅を借り上げた「みなし仮設」には2300世帯以上が残ると報じられています。入居者が減ったプレハブ仮設団地では管理が困難になるなどのケースもあります。取り残される被災者を生まない丁寧な対策が不可欠です。災害直後から壊れた自宅で生活を続けざるをえない在宅被災者への支援強化は待ったなしです。
福島県では県発表でも、なお4万1000人以上が避難を強いられています。このほか「自主避難者」も多くいます。長引く避難の中で震災関連死は2200人以上にのぼり、直接死を上回るなどの深刻な事態が続いています。
多くの福島の被災者は、原発事故が奪った、ふるさとでの平穏な暮らしをいまも取り戻すことができません。帰還困難区域以外での避難指示は解除されましたが、居住率は23%です。戻ろうとして自宅を整備した人も、周囲に病院や買い物ができる場所もないため帰還を見合わせるなどしています。戻った人も、戻っていない人も苦悩しています。避難指示解除を理由に支援・賠償の打ち切りをすすめることは許されません。
原発事故の賠償責任を果たさず、被害者切り捨てをすすめる国と東電の姿勢は重大です。被災者を画一的に線引きせず、被災者が生活と生業(なりわい)を再建できるまで責任を持つべきです。
真に寄り添った施策を
人口減少や高齢化などをはじめ被災地は大きな困難を抱えたままです。安倍政権は「復興・創生期間」を2020年度で終えますが、その後の方針具体化はこれからで、支援の縮小につながらないかと警戒と不安の声が絶えません。この8年の被災地の深刻な状況は、安倍政権の下での被災者支援・復興の問題を浮き彫りにしています。上からの押し付けの施策でなく、被災者に真に寄り添った支援・復興への転換こそが必要です。
(「しんぶん赤旗」2019年3月11日より転載)
東日本大震災から8年を迎えるにあたって・・党幹部会委員長 志位和夫
東日本大震災から8年を迎えるにあたり、あらためて犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災者のみなさんにお見舞いを申し上げます。日本共産党は、被災者の生活と生業(なりわい)を再建し、復興を成し遂げるまで、国民のみなさんとともに全力をあげる決意を新たにします。
1、被災者の生活と被災地の復興に、必要な支援を行い、国が責任を果たすことを求める
東日本大震災から8年が経過しましたが、被災者の生活と生業の再建も、被災地の復興も道半ばで、被災から長い時間が経過したことによる新たな困難も生じています。ところが、国が設定した「復興・創生期間」10年の終了が迫り、復興庁や復興特別交付金の廃止をはじめ国の復興支援策が抜本的に減らされる、という不安が広がっています。実際、安倍政権はこれまでも被災者支援の打ち切りと縮小を次々に行ってきました。
未曽有の大災害であり、大きな被害を受けた地域ほど困難で大規模な事業が必要になっています。10年という一方的な期限をたてに、被災者と被災地を切り捨てることは絶対にやってはなりません。国が最後まで、被災者の生活と生業の再建と被災地の復興に責任を果たすことを求めます。
住宅再建支援の継続・強化と災害公営住宅家賃の値上げ回避、孤独死が急増しているなかでの子どもや高齢者をはじめ被災者の心のケアと見守りやコミュニティーの確立、医療・介護、子育てと教育への支援など、被災者の生活と健康への不安を解消する取り組みの強化が必要です。被災地の産業再生も正念場を迎えており、グループ補助金に伴う借入や災害援護資金の返済猶予をはじめ、被災した企業、事業者の再開支援を最後までやり遂げることを求めます。
2、東日本大震災の痛苦の教訓を生かし、被災者支援制度と復興支援策の抜本的な強化を
東日本大震災の被災地は多大な困難に直面しましたが、それは被害の大きさだけではありません。わが国の制度が大規模災害からの復旧・復興に対応できない、不備だらけのものだったことが、被災者と被災地に多大な困難と負担をもたらしています。
被災した住宅や市街地の再建に、災害対策ではない区画整理事業や、災害を受ける前の制度である防災集団移転事業を、援用せざるを得なかったことで、復興事業に多くの時間と労力が費やされました。
住宅再建への支援が最大でも300万円と少ない上に、対象も全壊と大規模半壊に限定されているために、住宅の自力再建を断念した被災者も少なくありません。3700人を超える震災関連死も繰り返してはならない問題であり、避難場所の改善も急務の課題です。市街地や商店街、中小企業・小規模事業所、農林水産業などの事業を再建する支援策も貧弱で、被災者の運動でグループ補助金制度はできましたが、本格的な支援策の構築が求められています。公共事業を大型開発優先から防災・老朽化対策に転換するなど、防災のまちづくりをすすめることも国政上の重要課題です。
災害列島と言われる日本で、毎年のように大きな被害が起きています。東日本大震災を上回るような大規模災害の危険も存在します。東日本大震災の痛苦の教訓をくみとり、被災者生活再建支援法の抜本的改正と復興策の抜本的な強化を行うことは政治の責任です。
3、原発再稼働・推進のための福島切り捨てを許さない
福島県では、今も原発事故により4万人を超える人が避難生活を余儀なくされています。避難指示が解除された地域での居住者は住民登録数の23%、小中学校の児童・生徒数は、原発事故前の10%です。住民の帰還も、被災地の復興もすすんでいません。
ところが、避難指示の解除などを口実に、国も、県も、東京電力も被害者への支援と賠償の打ち切りを無慈悲にすすめています。原発再稼働・推進のために福島の事故も被害も「終わったもの」にしようとすることは、絶対に許すことはできません。
2月20日、横浜地裁は、避難指示が出された区域からの避難者と区域外からの自主避難者に「ふるさとを喪失し、生活を破壊された」として賠償を命じる判決を下しました。国の加害責任を認めた集団訴訟判決は全国で5件目となりました。国と東電が、住まいの確保や完全賠償など、すべての被害者の生活と生業が再建されるまで、責任を果たすことを求めます。
安倍政権は、国民多数の意思を無視して、原発再稼働・推進の政治に固執しています。しかし、「目玉」にしていた原発輸出は破たんし、原発がビジネスとしても成り立たないことが明瞭になっています。日本共産党は、国民のみなさんとともに、原発ゼロの日本を実現するために、力をつくす決意です。
(「しんぶん赤旗」2019年3月11日より転載)