第2原発廃炉 決断迫る
福島県の発表だけでも今なお4万2000人を超える県民が県内外での避難生活を強いられています。震災関連死は2260人と増え続け、避難指示解除区域の居住率は23%と住民の帰還が進んでいません。
避難の長期化、賠償や住宅支援が打ち切られた被災者の生活苦という、命に直結する課題に直面しています。
県民の運動と世論のなかで東京電力は昨年6月、福島第2原発(4基)の廃炉の方向を初めて示しましたが、正式表明には至っていません。早急に廃炉の決断を明言させることが、これだけの重大な原発事故被害を受けた福島県民にとって、第一義的な課題です。放射線監視のリアルタイム線量測定システムの継続、放射能汚染水の海洋放出反対も大多数の県民の願いです。
私たちは全国の原発再稼働と海外輸出を中止し、原発推進政策転換と地域主導型の再生可能エネルギーの推進を全国に発信しようと訴えています。日本共産党など野党4党が共同で国会に提出した「原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案」(原発ゼロ基本法案)は、その大きな力になるでしょう。
8年経過しても
8年が経過しても、深刻な被害が県民の生活と生業(なりわい)の再建を阻んでいます。国、県による被災者支援の切り捨てを許さず、被災県民に寄り添ったきめ細かな支援をあらゆる分野で継続する真の復興を進めることが、いよいよ重要になっています。
県は3月末で南相馬市、川俣町、川内村、帰還困難区域を除く葛尾(かつらお)村と飯舘村の避難者へ仮設住宅の無償提供を打ち切る方針です。打ち切り方針を撤回し、個別の事情に応じた延長が求められます。自主避難者への住宅支援として県独自で実施している家賃補助も打ち切りをやめるべきです。
放射線量の高い地点のフォローアップ除染や、特定復興再生拠点の線量を年間1ミリシーベルト以下にするための徹底除染が必要で、除染で出た除去土壌の公共事業での再生利用は中止を求めています。
県原子力損害対策協議会の全体会議を開いて、東電と国に加害者としての賠償責任を果たさせ、ADR(裁判外紛争解決手続き)の和解案拒否や商工業者への賠償打ち切りをやめさせるよう求めています。
支援は被災者に
県は復興期間終了後も財政支援を国に求めているものの産業支援が中心で、避難者支援はありません。被災者への医療、介護の保険料・利用料の免除措置や、県民の健康支援継続も必要です。
県は、大企業や財界のための事業を国と一体で進める福島イノベーション・コースト(国際研究産業都市)構想に2017年度と18年度、それぞれ約700億円計上。新年度は912億円を計上しています。アンケート調査(南相馬市)では「地元商工業に役に立つのか」という回答が多く、「何のための復興か」と批判の声も出ています。避難者置き去りの構想です。
一方で、医師数が16年の全国42位から18年44位、介護職員の充足率は全国ワースト1と県民の医療・福祉、子育てなどが全国最下位クラスです。原発事故の影響が反映しており、この分野こそ支援すべきです。
(福島県・野崎勇雄)
(「しんぶん赤旗」2019年3月10日より転載)