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東日本大震災・福島原発事故8年 被災地から(2)・・孤独死防止 続く自治会の模索

 岩手、宮城、福島の3県では恒久的住まいという位置付けの災害公営住宅約3万戸が、ほぼ完成しました。65歳以上の入居者は宮城県で4割超(うち3分の1が単身)、岩手県で55%(うち半数が単身)です。孤独死も年々増加しています。(表参照)

個人情報届かず

 仙台市宮城野区の鶴ケ谷第2市営住宅(28戸)の住民代表、松谷幸男さん(66)は入居して4年3カ月。この間6人が亡くなりました。90代女性が入居間もなく死亡。車いす生活の夫を介護する妻ががんで死亡。認知症の女性と60代男性が孤独死―。

 行政は入居者の氏名や家族構成を個人情報を理由に、自治会に提供しません。松谷さんは各戸の了承を得て名簿を作成。行政からの情報提供がある民生委員も引き受けました。

 約130戸が入居する福島県郡山市の富田団地の齋藤秀雄自治会長は「どういう人が入居したか、正直分からない。情報を持っている管理組合と連携を取りながら一歩一歩だね」と話します。

緊急時どう対応

 宮城県石巻市の災害公営住宅には、体調急変など緊急時に使うボタンが風呂と部屋に設置されています。押すと部屋の外のインターホンについている小さなランプが赤く点滅します。ただ、近所の住民に必ずしも気づいてもらえるわけではありません。

 同市の新渡波西住宅で暮らす阿部友一さん(59)は20年ほど前に患った結核などで3級の障害者手帳を持っています。今も激しい運動はできません。

 阿部さんの飼い猫が緊急ボタンを押した時も、どこからも何の連絡もありませんでした。健康に不安のある阿部さんは「通った人が発見すればいいが、人通りもすくないし…」と話します。

 「ランプが確認されても、そこからが大変だ」―。同市の、のぞみ野第2町内会長、増田敬さん(67)は指摘します。部屋の中に入るすべがないというのです。スペアキーは市が保管していますが、親族の合意がなければ開けられません。夜間など親族に連絡がつかない場合や、親族と交流がない人の場合など、さまざまなハードルがあります。部屋が開かなければ、窓を破り入ることになりますが、その場合の修繕費用は住人の負担。ペアガラスなので4万円ほどになります。24時間監視するエレベーター管理会社が鍵の管理をできないかなどの検討が始まっています。

 「自治会がどこまで入居者の生活に踏み込むのか。役割は何か、難しい。共助だけでは難しい」と増田さんは言います。

 孤独死を防ぐための各自治会での模索は続きます。

 (つづく)

■災害公営住宅での
 孤独死者数(県発表)
    宮城県 岩手県
2013年  ― 1人
 14年 3人 2人
 15年 11人 3人
 16年 15人 4人
 17年 41人 6人
 18年 50人 18人

※災害公営住宅戸数は宮城県が1万5691戸(2019年1月末時点)、岩手県が5583戸(18年12月末時点)。福島県は県管理の住宅での孤独死者数のみを把握し、累計10人としている。住宅戸数は4707(19年1月末時点)

(「しんぶん赤旗」2019年3月10日より転載)