東京電力福島第1原発事故で福島県から神奈川県内に避難した60世帯175人の住民が国と東電に総額約54億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2月20日、横浜地裁(中平健裁判長)でありました。中平裁判長は、国と東電の賠償責任を認め、原告152人に総額約4億2千万円を支払うよう命じました。
全国約30ある集団訴訟で、国を被告にした6件の判決のうち国の責任を認めたのは5件目。弁護団は「国の責任は定着した」と述べました。
判決は、2009年9月時点で、国は東電から貞観津波(869年)を考慮した津波計算の報告を受け、福島第1原発の敷地の高さを超える津波による事故の発生を予見できたと指摘。電源設備の移設によって大量の放射性物質の外部放出を回避できたにもかかわらず、国が規制権限を行使しなかったのは「看過しがたい過誤、欠落があった」と断罪しました。
賠償については、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域からの避難者に対する「ふるさと喪失慰謝料」の支払いを命じ、国の中間指針に最低50万円、最高450万円の上積みを認めました。
避難指示区域外からの避難者については、避難しないことで、「将来がんに罹患(りかん)したとしても、それが放射線被ばくを原因とするものなのか」「判然としない事態を受忍して生活を続けることにほかならない」と指摘し、区域外からの避難の合理性を認めました。
請求を棄却されたのは23人。判決による賠償額が既に支払われた賠償額を下回ることなどが理由です。
(神奈川県・小玉哲也)
(「しんぶん赤旗」2019年2月21日より転載)