太陽光発電で脱貧困・・中国の農村、生活が変化
自然エネルギーを大規模に導入する中国。北京の北西約200キロの農村、徳勝村は、太陽光発電を取り入れて貧困から脱却しました。河北省張家口市にある同村を訪ねました。(中国河北省・徳勝村=釘丸晶 写真も)
年収4倍 公益事業も充実
農家の陸金旺(りく・きんおう)さん(49)は「生活は大きく変わった」と喜びます。以前は年収約1万元(約16万円)で、2人の子どもの学費のため親戚に借金していました。現在は、太陽光発電所に貸した土地の賃料や発電所の管理、種イモ栽培により、年収は4倍化したといいます。今年6月には村が無料で提供する住宅にも入居します。
徳勝村は、周辺の村と同じく貧しい農村でした。土地が痩せて、主な産業の農業も振るいませんでした。数年前は、413戸のうちの過半数、212戸が貧困家庭として行政当局に登録されていました。
しかし、昨年末時点で貧困家庭は、母親が病気で働くことができない母子家庭1戸だけになったのです(中国は家庭の構成員ひとりあたりの年収が2300元=約3万7000円=以下を貧困家庭としています)。
脱貧困の原動力は、太陽光発電の導入です。民営企業・億利資源集団(エリオン)が、村民から土地を借り上げ、太陽光発電所を無償で建設しました。16年末に完成した同発電所の年間発電量は60万~70万キロワット時。この電気を売ることで、年約60万元(約960万円)の収入を村にもたらしています。
収入は貧困家庭への手当や医療費補助などの公益事業に充てられています。老人ホームの建設にも支出され、将来村民は無料で入居できます。
また、品種改良してブランド化したジャガイモの種イモを栽培するビニールハウス280棟を設置。貧困家庭が優先的に使用することで、収入増を実現しました。
農家の馬登雲さん(60)も、太陽光発電に土地を貸すなどして、妻と合わせた年収が6万~7万元になりました。「貯金して、6月に引っ越す新居の内装や家電購入に使いたい」とうれしそうに話しました。
中国は化石エネルギーから自然エネルギーへの転換を急速に進めています。2017年の年間発電量に占める自然エネルギーの比率は26・5%に達しました。太陽光発電は1・8%とまだ比率は低いものの、前年比57・1%の高い伸び率を記録。今後の成長が期待されています。
(「しんぶん赤旗」2019年1月4日より転載)
独 再生エネ電力消費40%超・・「転換」計画が着々
原発から再生可能エネルギーへと転換が進むドイツで、風力や太陽光など再生可能エネルギーが初めて年間電力総消費量の40%を超えたことが明らかになりました。独フラウンホーファー研究機構が1月2日に推計値を発表しました。
ドイツで2018年に消費された再生可能エネルギー電力は2190億キロワット時で、全電力消費量5426億キロワット時に占める割合は40・4%となり、17年の再生可能エネルギー消費量から4・3%の増となりました。同国の再生可能エネルギーは1990年の197億キロワット時から、11倍以上になりました。
再生可能エネルギーの中では、太陽光発電が前年から16%伸び458億キロワット時、風力発電も5・4%の増で1114億キロワット時となりました。バイオマスと水力はやや減少し、それぞれ448億キロワット時、170億キロワット時。
一方、電源種別で最も多いのが褐炭(低品位の石炭)による発電で1317億キロワット時。昨年12月に採掘をやめた石炭によるものが757億キロワット時、原発が721億キロワット時などとなっています。
ドイツのメルケル政権は11年に、22年末までに原発の全炉の運転を停止し、再生可能エネルギーを将来のエネルギー供給の柱と位置づける「エネルギー転換」計画を作成。30年までに再生可能エネルギーの消費割合を65%にする目標を掲げています。
フラウンホーファー研究機構のブルーノ・ブルガー教授は、独誌『シュピーゲル』に、「再生可能エネルギーの割合は上がっては来ているが、30年の目標を達成するには十分ではない」とコメントしました。
(片岡正明)
(「しんぶん赤旗」2019年1月4日より転載)