東電系作業員が労組結成「請負」も労働者だ
東京電力の電気メーター交換工事を請け負って働く人たちが、労働組合を結成し、不当な契約打ち切りの撤回などを求めて立ち上がりました。安倍政権が広げようとしている「雇用によらない働き方」の典型ともいえる請負契約の下で、安心して働ける環境とまともな生活保障を求めるたたかいです。
(田代正則)
契約打ち切り撤回求め立つ
組合員は、東京電力の送配電会社・東電パワーグリッドが約35%出資する重電会社・東光高岳100%子会社「ワットラインサービス」と請負契約を結んで働いています。東光高岳の歴代社長は東電出身者が務めています。
全労連・全国一般労働組合計器工事作業分会の分会長になった渡辺清さん(55)は、交換工事に従事して31年のベテランです。「いいかげんな作業をすれば事故につながるので、ルールは必要です。しかし、会社の罰則は、あまりに厳しい」と訴えます。
たとえば、作業終了の確認のために撮影した写真が不鮮明だと判断されれば、減点されます。交換したメーターに記入する作業記録を書き間違えても減点です。
大きな減点がつくと2週間などの作業停止になります。作業件数で収入が決まるため、生活が苦しくなります。「これでは、収入を確保しようと、安全上トラブルが起こりやすい雨天でも無理に作業してしまう恐れがあり、安全にもよくない」と渡辺さん。さらに減点が累積すると、契約打ち切りの恐れがあります。
安倍政権は、企業が雇用責任を負わずに、労働者が「個人事業主」として会社から仕事を請け負う「雇用によらない働き方」を広げようとしています。
しかし、東電の電気メーター交換作業者の実態をみるとおり、労働者保護ルールが適用されないだけで、会社との関係は対等とはいえません。
渡辺さんの仲間がスマートフォンアプリ「ライン」でいっせい送信された作業手順変更を見落としました。その時は注意だけですんだのに、あとから会社が一方的に罰則を適用して昨年11月、契約を打ち切ると通告してきました。
渡辺さんたちは12月7日、契約打ち切り撤回を求めて会社に団体交渉を申し入れました。
会社側は「労働契約を締結している従業員ではない」などとして団交を拒否。組合側は12月17日、都労委に不当労働行為を申し立てました。交換作業者は請負契約ですが会社の指揮監督を受けており、労働組合法上の「労働者」だと訴え、団交を求めています。
家庭などに設置された電気メーターは、法律で使用期限が10年と定められており、順次交換する必要があります。全労連・全国一般労働組合計器工事作業分会の組合員の多くは30~40年も作業に携わるベテランです。
東京電力は、政府方針に基づき、従来の電気メーターを2020年までにデジタル計測・通信機能を備えた「スマートメーター」に交換しようとしています。
いっせいに交換をすすめるため、経験の浅い作業者の増加と、交換が済んだ後の作業量の激減が問題になっています。
“失明事故の恐れ”
渡辺清分会長は、東電の重層下請けで、交換作業者が2週間程度の短期間の研修で現場に送られていると指摘します。「作業をしっかり身につけなければ、作業者自身が失明などの事故にあいます」と問題視しています。
メーターの安全交換に経験大切・・ベテラン作業員守れ
スマートメーターについては火災事故も相次ぎ、昨年12月、総務省消防庁の指示で、製品事故情報を知らせる消費者庁サイトに情報が掲載されなかったと報道されて問題になりました。
東光高岳の子会社、東光東芝メーターシステムズは12月26日、自社製のスマートメーターに不具合があり約10万台を交換すると発表しました。
東電パワーグリッドは12月25日、スマートメーターのネジ締め付け不足など施工不良による火災や出火が過去5年間に7件あったと発表しました。安全を守るには、ベテラン作業者を大切にすることが重要になっています。
ところが、会社は交換作業者への罰則規定を強化し、契約打ち切りの不安が広がっています。全労連・全国一般は、20年以降の作業量激減を見据えて、いつでも首切りできる体制をつくっているのではないかと分析しています。
生活保障など訴え
組合は、会社に対して、生活を保障できる作業の割り当てと単価の確保などを求めています。渡辺さんは「私たちは会社と寄り添って、いい仕事がしたい。会社は話し合いに応じてほしい」と話しています。
全労連・全国一般東京地方本部一般合同労働組合の森浩美副委員長は、「企業が雇用責任から逃げるために請負にさせられた労働者からの相談が増えています」と指摘。「財界・大企業は持ち株会社をつくり、事業を子会社化して、親会社より低賃金で働かせ、さらに請負化していく。もうけだけ自分のものにしようとする財界の思い通りにさせてはいけません。労働組合として請負労働者を守り、組織に迎え入れることが必要です」と強調しています。
(「しんぶん赤旗」2019年1月6日より転載)