国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)の会場で12月11日、環境NGOの人たちが静かな抗議をしました。
石油大手シェルが主催するサイドイベントへの抗議行動です。特定の企業名は言えないという「規則」のため「汚染者はCOPから出ていけ」などのプラカードを掲げています。会場は、国際排出量取引協会(IETA)のパビリオン。IETAには、多くの化石燃料産業の国際的大企業が名を連ねています。
農漁民に悪影響
ナイジェリアから参加したリタさんは、シェルが進めるニジェール川下流域での石油採掘が、住民生活や環境に壊滅的な影響を与えていると訴えました。
「毎日のように原油流出が起きている。漁民や農民の生活が破壊され、森林がなくなっている。天然ガスを燃やす施設が何百とあり、発がん物質をまき散らしている。妊娠した女性への悪影響はとくにひどく、死産や奇形児の出産が増えている」
リタさんは、そのシェルが「環境の救世主のように振る舞い、会場で化石燃料に基づく解決策を宣伝するのは冒とくだ」と怒ります。ナイジェリアでは、政府系企業が合弁契約を結んでおり、強大な世界的企業シェルの横暴に対して、政府は物が言えません。
トーゴから来たクワミ・クポンドさんは、同国の沖合での石油採掘計画を阻止しようと運動しています。
「(イタリアの大手石油・ガス会社)ENIが石油探査を行ったが、その海域での漁民の操業を一方的に禁止した。今、政府は採掘企業を探しているが、ナイジェリアのような被害が出ることを住民に知らせ、国会議員などに働きかけている」といいます。
シェルの本社のあるオランダでは環境団体「FoEオランダ」が、シェルの活動はパリ協定違反だと裁判所に訴えるための原告を募っています。
会議に企業の金
今回の会議では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1・5度特別報告書」をCOPが「歓迎」することに、サウジ、米、ロシア、クウェートの4カ国が反対しました。このことが、他国の政府や多くの市民社会の怒りを呼びました。
英国の調査報道メディア「デスモッグUK」は12日、この4カ国の政府代表団のうち、少なくとも35人が、石油や鉱山関係の企業・団体に現在所属しているか、過去に所属していたと報じました。
「われわれが気候の深刻な破壊に直面しているのは、気候会議に化石燃料企業の金が流れ込み、汚いエネルギーのシステムを続けさせようとしているからだ」。環境団体「FoEインターナショナル」のサラ・ショーさんは、COPのあり方にも批判の目を向けていました。
(つづく)
(カトウィツェ〔ポーランド南部〕=COP24取材団)
(「しんぶん赤旗」2018年12月19日より転載)