ポーランドのカトウィツェで開かれていた国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)は、地球温暖化対策を定めたパリ協定の「実施ルール」を採択して閉幕しました。パリ協定の目標達成に向けた枠組みを具体化し、それを機能させる土台を築いたことは重要です。こんご各国で実施ルールの実行をすすめるとともに、国別目標引き上げをはじめ、温室効果ガス削減を実際に加速させる真剣な取り組みが求められます。
実施ルールの仕組み整う
2015年採択のパリ協定は、20年以降の温暖化対策の国際的な枠組みです。産業革命前よりも「世界の平均気温上昇を2度より十分低く抑え、1・5度に抑える努力を追求する」という目標を掲げ、すべての締約国に温室効果ガス削減目標の策定を義務づけました。どれだけ削減するかは各国に委ね、5年ごとに検証して目標を高めていくことにしています。COP24が採択した実施ルールはこの仕組みを機能させる指針です。
交渉は難航し、日程も延長されました。しかしすべての国が、温室効果ガスの削減目標や、気候変動の悪影響を少なくする「適応」対策、途上国への「資金や技術の支援」などについて議論を重ね、一定の共通のルールとしてまとめることができました。
また、多くのNGO(非政府組織)の活動、自治体や企業などの多様な動きもありました。実施ルールの合意ができたことは、温暖化防止への各国政府と市民社会の明確な意思を示したものです。
合意を後押ししたのは国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が10月に公表した「1・5度特別報告書」です。産業革命前から世界の平均気温が約1度上昇しており、そのもとで世界中で異常気象や海面水温の上昇、洪水や熱波などが起こっていること、1・5度上昇でも十分に危険な気候変化であり、50年前後に排出量を実質ゼロにする必要性が科学者から示され、COP24の議論に大きな影響を与えました。
各国はパリ協定の枠組みが始まる20年までに、国別目標を再提出することが決まっています。COP24の文書では目標の引き上げを促す強い表現が盛り込まれなかったとはいえ、機運を高める「タラノア(フィジーの言葉で、開かれた話し合い)対話の成果を考慮して、各国は国別目標を準備する」という文言が入りました。IPCCの1・5度特別報告書の内容を今後の議論に生かすことも呼びかけられました。
17年のトランプ米政権によるパリ協定離脱の表明以降も、温暖化対策促進の世界の大きな流れが変わらないことは明らかです。
日本は真剣に取り組め
来年9月には国連主催の気候サミット(ニューヨーク)、11月にはCOP25(チリ)開催が決まり、これらの会議に向けさらなる「野心的な」目標引き上げと取り組みの強化が重要となっています。
来年6月には、温暖化対策も大きなテーマとなる20カ国・地域(G20)首脳会議が日本で開かれます。脱炭素化に逆行する石炭火力発電の推進政策や、主要国で最低レベルの30年までの日本の温室効果ガス削減目標が問われます。安倍晋三政権は後ろ向きの姿勢を改め、パリ協定実施への責任を果たすべきです。
(「しんぶん赤旗」2018年12月18日より転載)