COP24inポーランド 日本企業 石炭火発撤退表明したが… ・・既存計画停止せず 環境NGO「空っぽ」と指摘
【カトウィツェ(ポーランド南部)=岡本あゆ】「問題は、多くの日本人が、日本を気候変動対策の先進国だと思い込んでいることだ」。大手住宅メーカー・積水ハウスの阿部俊則会長は、カトウィツェで開かれている国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)の日本政府パビリオンでそう発言しました。各国のビジネス界が気候変動対策を見すえる中、「乗り遅れている」と指摘されてきた日本企業に意識変化が起きつつあるのか―。
COP会場に集まる欧米の産業界は、今世紀後半にCO2排出の実質ゼロをめざすパリ協定を、再生可能エネルギーなどのビジネスチャンスとみています。
石炭火力などへの投資を回避する動きも広がっています。環境規制が進めば、利益を回収できない「座礁資産」になるからです。神戸製鋼や丸紅など、国内外で石炭火力発電所新設計画を乱立する日本の産業界は、「周回遅れ」と呼ばれてきました。
昨年11月のCOP23(ドイツ)では、発電所建設に反対する東南アジアの参加者らが日本を名指しで非難。NGO関係者は「企業の参加者にもこたえたようだ」と話します。
その後、丸紅や三菱などの企業が相次いで“石炭火発の新規開発から撤退”すると表明。今年7月には、大手企業や自治体による「日本気候イニシアティブ(JCI)」が始動。日立などの代表者が、カトウィツェの日本パビリオンでも会見しました。会場でも「山が動いた」と評価の声が上がります。
一方、フィリピンで丸紅や東京電力などの発電所建設に反対しているアーロン・ペドロサさんは、丸紅の“撤退”表明について「空っぽ」と語ります。
アーロンさんは「丸紅は世界に計300万キロワットの石炭火力を保有する、石炭火力の最大の擁護者の一つだ。そんな企業が石炭からの撤退を公にしたことは歓迎する」としたうえで、こう指摘します。
「表明は、既にある建設計画には関係がない。撤退といいながら、東南アジアでの石炭火力投資を増加させている。われわれの暮らしや共同体は、彼らにはビジネスにすぎない。既存計画の停止がなければ“撤退”は空虚な飾りでしかない」
世界の流れに追いつくのか、虚飾で終わるのか。日本の産業界の動きが問われます。
(「しんぶん赤旗」2018年12月14日より転載)
COP24inポーランド 「実施ルール」めぐり応酬
先進国の歴史的責任どうする
【カトウィツェ(ポーランド南部)=伊藤寿庸】途上国と先進国の間で、パリ協定の「実施ルール」づくりをめぐってせめぎあいが続く国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)。大きな論点となっているのが、先進国の歴史的責任をどうとらえるかです。
1997年に採択された京都議定書で、先進国と途上国を明確に区別し、先進国だけが削減義務を負いました。「共通だが差異ある責任」(CBDR)と呼ばれる考えです。
先進国はパリ協定の下では途上国も「共通のルール」で排出削減、報告義務などを負うべきだと主張。これに対して、途上国は、パリ協定でも「先進国が主導」すると明記しており、CBDRも引き継いでいると反論。「ルール」も途上国向けに別建てにすべきだと主張しています。また排出削減だけでなく、被害を受けている途上国の「適応」(被害に強くする施策)や「損失と被害」への先進国の資金拠出も求めています。
12月12日、中国、インド、ブラジル、南アが共同で記者会見。南アは、「共通ルール」の押し付けについて「パリ協定を後戻りさせる協定の『再交渉』であり、認められない」と述べました。
COP24で合意に達しない項目が多数残る可能性があり、NGOは「(大きな穴のある)スイスチーズのような『実施ルール』は受け入れられない」(グリーンピースの代表)と懸念しています。
先週末には、COPの補助機関の討議で、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が10月に発表した「1・5度特別報告書」を「歓迎する」という議案の文章に、サウジ、米国、ロシア、クウェートが反対。米国は同報告書の内容を「承認しない」とまで発言しました。
議長が「IPCCの科学者の努力に留意する」とする代案を提案しましたが、途上国、島しょ国、アフリカ、欧州連合(EU)などほぼすべての交渉グループが「強い失望」を表明して反対。結局、同補助機関がCOPにあげる文章から、「1・5度報告書」への言及そのものが落とされてしまいました。
これには「COP24の成果文書が特別報告に言及しないことは決して受け入れられない」(モルディブのハッサン外相)、「だれかが現実を受け入れることを拒否している」(クック諸島のプナ外相)など強い反発が出ています。
ポーランドの環境団体「ポーランド・エコロジカル・クラブ」の代表は12日の記者会見で、議長国の運営に苦言。石炭の採掘を今後100年続けるなど脱炭素化の意欲の欠けたポーランド政府の立場が「議長国として効果的な働きの障害になっている」と批判しました。
(「しんぶん赤旗」2018年12月14日より転載)