11月28日に運転開始から40年になった老朽原発・日本原子力発電(原電)の東海第2原発(茨城県東海村)。原子力規制委員会が運転期間の20年間延長を認め、国の主な審査が終わったもとで、東海第2原発の再稼働問題は、30日に告示される茨城県議選の最大争点です。日本共産党は「再稼働ストップ、廃炉に」と訴えています。そもそも東海第2原発の持つ危険性とは…。(松沼環)
東海第2は事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型。事故時に放射性物質を閉じ込める格納容器がすでに再稼働している加圧水型と比べ5分の1程度と小さく、安全上の欠陥がより大きいのです。
このため再稼働には事故時に格納容器の破損防止のために、ガスを環境に放出するベント装置が義務づけられています。装置には放射性物質をこしとるフィルターが設置されますが、放射性の希ガス(キセノンなど不活性気体)には全く効果がなく、セシウムもすべてが取れるわけではありません。
避難中に被ばく
規制委の審査で検討された事故想定で、環境中に放出されるセシウム137が最大になるのは、事故発生から19時間後にベントする場合で18兆ベクレル。セシウム137以外の放射性核種は、審査で評価を求めていないため不明です。しかも、これらは事故対策がうまくいった場合の数値で、水蒸気爆発など重大問題はまともに検討されていません。
一方、茨城県が過去に実施したシミュレーションでは、予防的に避難が必要とされる5キロ圏内の住民の90%が5キロ圏外に出るのに15時間、100%では22時間かかると発表しています。住民が避難途中に被ばくする恐れがあります。
そもそも、東海第2原発は運転開始から40年となる老朽原発です。老朽原発を酷使するほど危険が高まります。原子炉圧力容器が中性子線の照射でもろくなる「照射脆化(ぜいか)」という原発特有の弱点もあります。さらに古い原発は機器の老朽化に加え、設計の古さも問題です。
耐震性では設計当時(1970年代)は、想定する地震の揺れ、地震動は270ガル(ガルは加速度の単位)でした。それが今回の許可時に、基本的な設計は変わらないまま1009ガルと4倍近くに引き上がっています。
規制委の審査で問題になった一つがケーブルの難燃化です。
1975年に米国の原発で、点検に使用したローソクの炎が電気ケーブルに燃え移り数時間にわたって燃え続け、一時は炉心冷却が困難になる大事故が起きました。
この事故を契機に、日本では80年に原発のケーブルに難燃材料を使うことが定められましたが、古い東海第2原発はこの要件を満たしていません。福島第1原発事故後に改定された原子炉等規制法では、バックフィット(既存施設の基準適合)が求められ、再稼働にはケーブルの取り換えが必要でした。
しかし原電は、一部は取り換えるものの大部分はケーブルに難燃シートを巻けば基準を満たすと主張。結局、規制委も認めました。
しかし、原電が主張するようにシートをすき間なくきっちりと巻けるのか、一度しっかり巻いたとしてもその状態を維持できるか。原発のケーブルなどの検査は、実質的に事業者まかせです。安全より既存原発の再稼働を優先させています。
大震災時綱渡り
東海第2原発は2011年の東日本大震災の被災原発です。地震後、原子炉は停止しましたが、外部電源が喪失し、さらに津波で非常用ディーゼル発電機の3台中1台が停止。このため圧力容器の弁をたびたび開放しながら注水を行い、3日以上かけて冷温停止に至りました。その間、原子炉格納容器内が百数十度に上昇するなど、まさしく綱渡りでした。
(「しんぶん赤旗」2018年11月29日より転載)