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景勝地に巨大風車?! 貴重な自然壊れる・・住民懸念 オリックス発電所計画 徳島・剣山周辺

 オリックス(本社・東京)が日本百名山の一つ、徳島県の剣山(つるぎさん)周辺で大規模な風力発電施設の建設計画をすすめています。自然保護団体や地元住民から「豊かな自然、生活環境が損なわれる」と懸念する声が広がっています。(徳島県・藤原肇)

 3月に発表された計画によると、建設される区域は、美馬市、神山、那賀両町の境にある天神丸(1632メートル)から高城山(1628メートル)にまたがる尾根伝いの2990ヘクタール(東京ドーム約640個分)にも及びます。高さ最大175メートル(50階建てビルに相当)の巨大な発電用風車42基を建設し、総出力は最大14万4900キロワットを想定。2023年10月に着工し、26年10月の営業運転を見込んでいます。

希少な動植物も

 建設想定区域は、県内屈指の自然環境が残された景勝地。冷温帯地域のブナ林のほか、ツルギテンナンショウ、ニセツクシアザミなど分布が限定される希少植物が生育しています。本州とは異なる遺伝的特徴を持つツキノワグマが生息しており、個体数は十数頭と絶滅が懸念されています。天然記念物に指定されているニホンカモシカ、ヤマネなど希少動物の生息地でもあります。

 オリックスが作成した「計画段階環境配慮書」にも「どのような配慮を行ったとしても開発事業を実施するのは難しい場所だ」と指摘する専門家の意見が記されています。

 県勤労者山岳連盟の天野和幸理事長は「あまりにも巨大な開発工事だ。悪影響はかなりある」とのべ、動植物へのダメージ、景観破壊などをあげ、「山を削ってしまえば元には戻らない」と指摘します。

 同連盟と県山岳連盟、剣山クラブ、三嶺(みうね)の自然を守る会の山岳4団体は反対を表明し、市民向けの勉強会を開催するなど、計画を周知しながら中止を求める署名に取り組んでいます。

頻繁に土砂崩れ

 地元、神山町の「里山の暮らしと森を考える会」共同代表の一人、近藤奈央さん(36)は「すぐに崩落するような山で、大きな風車がつくれるのか疑問です」と語ります。

 想定区域は破砕帯の脆弱(ぜいじゃく)な地盤で、豪雨での土砂崩れが頻繁に発生しています。「山の恵みを享受しながら生活しています。開発による水源への影響など心配です」と言います。

 飯泉嘉門知事は5月、オリックスに対し、希少動植物や景観などへの懸念を示し、重大な影響を回避できない場合には事業中止など抜本的な計画の見直しを求める意見書を提出しました。環境省、経済産業省も同様の意見書を発表しています。一方、オリックスは先の配慮書で「重大な影響を回避又は低減できる可能性が高い」と明記しており、計画の行方は予断を許しません。

 日本共産党県議団は6月議会で飯泉知事に対し、「計画について、きっぱり反対を」と文書質問しました。

 二度の現地視察を行った達田良子県議は「想定区域は、希少な自然が残る徳島県の宝です。そんな場所に巨大な風車をつくるなど普通では考えられない発想です。自然エネルギーは推進すべきですが、そのために貴重な自然を壊してしまうのでは本末転倒です」と語っています。

(「しんぶん赤旗」2018年11月8日より転載)