“地球は一個の巨大な生き物で、すべては互いにつながっている”。これは18世紀後半にドイツで生まれた博物学者で冒険家のフンボルトの自然観です。伝記『フンボルトの冒険』で知りました。南米の山に登り、6000メートル近い山腹で眼前に広がる景色を見て、そうした考えに気づいたといいます▼200年以上前のことです。海流やペンギンなどにその名を冠したフンボルト。伝記によれば、人間の活動が原因で気候を変化させ、将来の世代に影響を及ぼすと警告した最初の科学者だったとあります▼国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が今週、特別報告書を公表しました。それによると、世界の平均気温は産業革命前からすでに1度前後上がり、現在のペースで地球温暖化が進んだ場合、早ければ2030年にも1・5度上昇する可能性が高いと▼気温上昇で世界はどうなるのか。1・5度上昇の場合に比べ、2度上昇の場合は、干ばつや台風関連の豪雨も多くなり、洪水の影響を受ける地域は広がると予測▼海面は0・1メートル上昇し、動植物の生息域は2倍以上喪失。貧困、健康被害、トウモロコシやコメの収穫量など人類社会への影響の大きさを指摘しています▼要するに、1・5度上昇の方が2度上昇より悪影響は少なくて済むというのです。1・5度達成の道筋も示され、再生可能エネルギーを50年に電力の70~85%に高め、石炭火力をほぼゼロにすれば可能だと。豪雨などの災害が多発する日本。エネルギー政策の転換は急務です。
(「しんぶん赤旗」2018年10月12日より転載)