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IPCC特別報告・・温暖化への警告を受け止めよ

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界の平均気温が産業革命前に比べすでに約1度上昇しており、地球温暖化がこのまま進めば2030~52年の間に1・5度に達するとした特別報告書を公表しました。1・5度上がるとサンゴ礁の多くが消滅するなど生態系や海面上昇に深刻な影響を与えると指摘し、二酸化炭素(CO2)排出量を厳しく抑え込むことを求める内容です。地球環境の将来にとって温暖化対策は一刻も猶予のない事態であることを示しています。各国政府は真剣な取り組みを進めるべきです。

「1・5度未満」に抑え

 IPCCは195カ国が加盟し各国の科学者らで構成され、気候変動にかかわる科学的な研究を収集、評価するための国連の組織です。温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」は世界の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べ2度未満に、さらに1・5度未満に近づけるという目標を明記しました。今回の報告書はこれを受けて、平均気温が1・5度上がった場合の地球環境への影響を初めてまとめ、2度上昇した場合との違いを示したことが特徴です。

 たとえば、海面上昇をみると、1・5度上がると2100年までに26~77センチ上昇するものの、2度上がるよりも上昇幅は約10センチ低く、被害を受ける人は1000万人少なくなると推計しました。

 生態系では、上昇幅1・5度と2度を比較すると昆虫や植物、脊椎動物の生息域の消滅の違いが2倍以上にもなります。サンゴ礁は2度上昇ならほぼ消滅しますが、1・5度上昇に抑えれば10~30%は生き残る可能性があるとしています。2度上昇では熱中症、マラリアやデング熱などの被害も広がります。異常高温、干ばつ、台風による豪雨も、2度上昇の場合1・5度よりも多くなると予測しています。

 1・5度上昇であっても極めて厳しい影響を与えますが、2度ではさらに危機的な状況を招くとの警鐘は重大です。

 報告書は「1・5度未満」にする対策として、30年までに世界のCO2の年間排出量を10年比で約45%削減することを打ち出しました。これは各国に削減目標の見直しを迫るものです。さらに50年前後には排出量を実質ゼロにする必要があるとして、世界の電源構成で再生可能エネルギーの割合を70~85%にすること、CO2排出量が大きい石炭火力発電をゼロにすることなどを盛り込みました。

 報告書は、12月にポーランドで開かれる気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)での議論の科学的な基礎となります。各国が対策の強化で合意することが求められます。

日本の低い目標を改めよ

 日本の30年のCO2排出削減目標は「2013年比26%削減」にとどまり、「1・5度未満」に見合わない低い水準です。削減目標引き上げは不可欠です。石炭火力発電は新たな建設計画を30基以上進める一方、再生可能エネルギーの割合は現在10%台にすぎません。安倍晋三政権が7月に閣議決定した「エネルギー基本計画」は原発と石炭火力発電を基幹電源に位置づける逆行したものです。同計画は撤回し、エネルギー政策を根本的に見直すとともに、温暖化対策を抜本的に強めることが重要です。

(「しんぶん赤旗」2018年10月11日より転載)