「われわれはよく論議し、将来の基礎になるものをつくりあげた」・・11月26日、メルケル首相はほっとした表情を見せました。
9月の連邦議会選挙結果判明から2ヵ月、ようやく保守のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)が連立協定で合意。調印はさらに同協定がSPDの全党員投票で承認された後の12月16日、メルケル新政権が誕生したのは選挙終了から約3ヵ月過ぎた17日でした。
国内外で注目された今回のドイツ連邦議会選挙は内政で、労働者の4分の1に広がった低賃金、非正規労働と貧富の格差、脱原発を進めていく上でのエネルギー政策が問われました。債務危機の続く欧州政策では、経済大国のドイツが緊縮・労働市場改革政策の押し付けを続けるのかどうかが争点でした。
選挙結果はCDU・CSUが議席を大幅増。しかし社会的公正を訴えたSPD、90年連合・緑の党、左翼党の3党が合計で上回りました。このため連立交渉では、保守側も社会的公正の要求を受け入れざるを得ませんでした。
22年までに停止
連立協定ですんなりと合意したのは、エネルギー政策です。選挙前にメルケル政権は、東京電力福島第1原発事故の教訓から、2022年までにドイツにある全原発の稼働を停止し、廃炉に進むことを決定。今回はその上で、環境相と経済技術相が分担していた「脱原発」「再生可能エネルギー普及」の任を新たにつくられたエネルギー相が担当します。再生可能エネルギー普及のために電力価格に上乗せされる負担金を大企業にも支払わせる方向で協定に盛り込まれました。
17年に完全実施へ
対立点となった全国一律の法定最低賃金も、時給8・5ユーロ(約1200円)とて15年から段階的に導入を始め、17年1月から完全実施することで合意しました。
その中で、欧州債務危機への対応は、あまり変化をみせていません。メルケル首相は、19日の欧州連合(EU)首脳会議で、経済改革について拘束力のある協定を結ぶよう各国に求めました。EU監視下で労働市場の自由化や、年金改革などをやる国には一定の金融支援を行うと表明。従来の政策の延長にとどまっています。
(片岡正明)
ドイツ新政権の初の閣議にのぞむメルケル首相(右から2人目)とガブリエル副首相(左から2人目)ら=12月17日、ベルリン(ロイター)