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全道停電(ブラックアウト)背景に原発固執・・北海道電もリスク認識 & 謎だらけブラックアウト・・停電回避システム、突然停止なぜ

全道停電(ブラックアウト)背景に原発固執・・北海道電もリスク認識

地震により損傷した笘東厚真火力発電所=9月11日午後、北海道厚真町

 北海道南西部の胆振(いぶり)地方を震源とする、最大震度7の地震から1週間以上がたちました。道内全域に及ぶ停電「ブラックアウト」が起き、いまだに市民生活に甚大な影響を与えています。ブラックアウト発生の背景には、泊原発(泊村)の再稼働に固執し、一極集中の電力供給を続けた北海道電力の経営体制があるとの指摘が出ています。

 (関連15面)

 6日未明、震源地に近い厚真町の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所が緊急停止しました。同発電所3基の総出力は165万キロワットで、道内の電力需要の半分を担っています。

大電源に頼って

 電力は需要と供給を常に一致させる必要があります。需給のバランスを示すのが周波数(電圧や電流が1秒間に正と負に切り替わる回数)です。周波数の大幅な変化は発電設備の故障につながります。苫東厚真発電所の大量の電力が脱落したことを発端に、需給バランスが崩れ始め、最終的に他の発電所も自動的に停止しました。

 環境管理工学が専門の北海道大学工学院の山形定(さだむ)助教は「タンデム(複数人乗り)自転車をこいでいる時に、一人が脱落すると他の皆にかかる負荷が増える。限界を迎える前に一斉にこぐのをやめてしまうようなもの」と説明します。

 元北電社員の水島能裕(よしひろ)氏は「苫東厚真発電所や泊原発といった大電源に頼っていたことが、根本的な原因ではないか」と語ります。

 北電は「苫東厚真発電所が全基停止することは想定していなかった」としていますが、苫東火力への集中による停電のリスクは認識していました。

 2012年に泊原発が停止したあと、苫東厚真発電所の設備利用率は10年の64%から13年に85%まで増加。当時、北電は「苫東厚真など大型火力の重大トラブルが起きれば、厳しい電力需給が予想」としていました。

 経済産業省の専門家会合(電力需給検証小委員会)は、15年10月の報告書でこう指摘していました。「北海道電力においては(中略)過去最大級、又はそれを上回る計画外停止が発生しても、電力需給がひっ迫することのないよう、多重的な需給対策を講じ、安定した電力需給の実現に万全を期すべき」

中小規模発電を

 しかし北電はあくまで「泊再稼働によって供給面の正常化を図りたい」(真弓明彦社長、16年)と泊原発の再稼働に固執しました。同年、北電は新規制基準対応として泊原発に2000億~2500億円を投じると発表しています。水島氏は「泊の再稼働ありきで液化天然ガス(LNG)の導入も遅れてしまった」と話します。

 老朽化した火力発電所の代替として、石狩湾新港で建造中のLNG火力発電所について、北電は2・3号機の稼働を2~3年遅らせる方針を昨年決めています。

 北電はLNG火力の稼働を遅らせたことについて、「火力発電所の経年劣化はわかっていたが、道内の電力需要が伸びなかったため」といいます。

 水島氏は「泊が再稼働すると電気が余るため、それを前提にあえて遅らせている。泊の再稼働ありきで老朽火力への対応は怠られていた」と批判します。

 地域政策が専門の小田清・北海学園大学名誉教授は「農村など、大量の電力を必要としない地域もある。その地域を賄うだけの中小規模の発電施設を全道におくべきだった。そうすれば根室や釧路の酪農地帯で牛乳を捨てることもなかった」と指摘しています。

 (「電力」取材班)


北海道地震 謎だらけブラックアウト・・停電回避システム、突然停止なぜ

発生1分後苫東厚真停止17分後 全発電所で

 6日未明に起きた最大震度7の北海道地震で、道内のほぼ全域の約295万戸が停電となった「ブラックアウト」。しかし、地震の発生からブラックアウトに至った詳しい経緯について、政府も北海道電力も明らかにしていません。

 地震が発生したのは6日午前3時7分。当時、震源に近い苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(3基、出力計165万キロワット)が、約300万キロワットの道内の需要の半分を賄ってフル稼働していました。

 1分後の同8分、2号機(60万キロワット)、4号機(70万キロワット)が地震の揺れを感知して緊急停止しました。計130万キロワットの電源が失われたため、道内の一部地域を強制的に停電させて需要を減らすなどして需給バランスを取り戻す対応を実施。さらに地震前から本州から北海道に電力を融通していた送電設備「北本連系線」を通じて最大容量の60万キロワットまで送られていたといいます。苫東1号機(35万キロワット)は、2、4号機停止後も17分間稼働を続けていました。

 しかし、同25分ごろに1号機は緊急停止します。同時刻、別の奈井江1号機(17・5万キロワット)、知内1号機(35万キロワット)、伊達2号機(35万キロワット)の火力発電所も設備が壊れるのを防ぐために自動的に止まりました。北本連系線も停電によって電源を失い送電できなくなり、道内全域が停電しました。泊原発の外部電源がすべて失われたのも3時25分でした。北電はこの時刻を「ブラックアウト」としています。

 大規模停電を回避するシステムが一時的に機能していたようなのに、なぜ止まってしまったのかは不明です。

(写真・上)損傷した笘東厚真火力発電所の2号機ボイラー管=9月6日午前、厚真町(北海道電力提供)
(写真・下)出火した笘東厚真火力発電所の4号機タービン=9月6日午前、厚真町(同)

 北海道電力はその後、地震の揺れを感知して停止したという苫東厚真火力の2号機で、高温の水蒸気が通るボイラー管11本が損傷していることを発表。タービンの先端部で火災があった4号機は、タービンの温度が高くて点検ができないため、点検は16日の週になるといいます。

 2、4号機停止後も17分間稼働していた1号機にもボイラー管2本の損傷が見つかりました。見つかった損傷がいつ発生したものなのか。

 当初、経産省と北電は、苫東火力の復旧見通しは1週間以上としていましたが、11日には、3基の復旧は11月以降の見通しだとしました。

 北電は最大129万キロワットまで失われる想定で「訓練はしていた」といいます。訓練が生かされなかったのはなぜなのかも検証する必要があります。

 政府は11日になって、北電や全国の電力需給調整を担う電力広域的運営推進機関に検証作業着手を指示するとしています。

 (「電力」取材班)

6日午前3時7分 地震発生

 同8分 苫東厚真2、4号機(計130万キロワット)が緊急停止

  北海道電力は一部地域で強制停電、本州から60万キロワットの送電

 同25分 苫東厚真1号機や他の発電所が止まり、本州からの送電もストップ。道内295万戸が停電する「ブラックアウト」。停止中の泊原発は外部電源を喪失し、非常用電源で使用済み核燃料を冷却

(「しんぶん赤旗」2018年9月16日より転載)